暑さのこって、きみ居らず ページ1
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タヒネタ注意
大丈夫な方だけどうぞ。
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あの夏の日、俺は家でゴロゴロしていただけだった。まだまだ蝉がうるさくて。そろそろ涼しくなんないかなとか考えてたんだ。
でも母親から聞いたその一報はあまりにも急すぎて。
「ねえ、龍樹。小学生の頃家が隣だった栞ちゃん…工藤栞ちゃんのこと覚えている?今連絡がきたんだけど、栞ちゃんがね________。」
思わず手の力が抜けた。
ベシャリ、アイスの落ちる音。それだけが強く強く耳に残って。その後の言葉なんて何にも聞こえやしなかった。
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元々俺と工藤は家が隣同士で、家族ぐるみの付き合いだった。
家族旅行も工藤の家と。お祝い事も工藤の家と。小さい頃は良かった。何にも考えず遊んで、しゃべって。
あいつは足は遅かったけど、頭が良くて。いつも勉強を見てもらっていた。いつも二つに結んでいる髪を下ろすとイメージがだいぶ変わって。俗に言う隠れ美人?ってやつだった。
素直に工藤と遊べなくなったのは、小学校高学年になってきて、周りには少しずつソウイウ話が増えていったくらいから。
「知ってる?〇〇ちゃんと××くんって、付き合ってるらしいよ!」
「えぇ〜!そうなの!?」
「私は△△くんが好きかも…!」
所詮恋バナ。けどこれは女子に限ったことじゃない。
男子だって。
「え、お前好きな奴いんの!?」
「い、いねぇよ!」
「またまた〜そんなこと言っちゃってぇ〜」
ずっと関わってこなかった「恋愛」という世界。あの時の俺にはとても眩しく感じられた。
まあもちろん家が隣で幼馴染の俺と工藤にもその矛先は向かってくるわけで。
「なあなあ、
『バッ!おまっんなわけねーだろ!』
「マジ?」
『マジマジ。大マジ。』
「良かった〜
俺さ、実は…」
この先は分かりきってたことだった。だけど、なぜかとてつもなく聞きたくなくて。
『っ…!わ、悪りぃ。俺ちょっと用事思い出したわ。じゃな!』
「え、あ、うん。じゃあまた明日な!」
その日は蝉がうるさかった。
・
それから俺は中学に上がると同時に親の転勤で引っ越した。
中学に入ってからは特に何もなく過ごしていった。否、過ごしていくことができた。
あの連絡を聞くまでは。
「栞ちゃんがね、死んじゃったって…自 殺で、9月1日に、…」
あいつが、工藤が、
『死んだ…?』
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作者名:満月 | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Syuto/
作成日時:2023年9月7日 17時