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憧れ9 ページ10

エマside

パパは無敵の佐野って言われているけど、
私たちと同じ人間だ。

強い部分もあれば弱い部分もある。

お兄ちゃん達でも知らない、パパの弱いところ。
知っているのはおじいちゃんと私ぐらいだと思う。

私は、偶然見ちゃったから、
パパが”お母さん”の仏壇の前で泣いているのを

それは、私のママがどこかに行っちゃった数日後、
いつも笑顔で私達に『いってらっしゃい』『おかえり』って
言っているパパ、そんなパパが顔を歪ませ、
微かな嗚咽を吐きながら泣いていた。

それを見ていたらおじいちゃんが言った。

「エマ、Aは、お父さんは悲しいから泣いているんじゃない」

寂しいから泣いているのさ、って

「もし、お兄ちゃん達が急に遠くに行ってもう会えないってなったら、エマはどう思う?」

そう聞かれて真っ先に思い浮かんだ。

いやだ。行かないで。もっと一緒にいたい。

少し前に体感した気持ち。
ママともっと一緒に居たいって気持ち。
”お兄ちゃん”と離れたくないって気持ち。

1回思ったら涙が出てきてしまって、
止まらない私をおじいちゃんが抱きしめてくれた。

「エマ、お前はお父さんの傍にいてあげなさい」
「いてあげるだけでいいの?」
「こうやって強く抱きしめるだけで落ち着くのさ」

頭を撫でながらそう言うおじいちゃん。
私にできるかなって聞いたら
少ししわくちゃな笑顔を見せて

「エマだからできることさ」

ほら、行っといで、と襖を開けるおじいちゃん。

いつも見ていた大きな背中は小さく見えた。
消えてしまいそうなぐらい、儚く見えた。

そんな背中に私は抱き着いた。
どこにも行かないように力強く。

私に気付いていなかったのかパパはびっくりしていた。

「エマ?どうしたんだい?」

涙を拭いながら私の頭を撫でてくれるパパ

「パパ、私もう寂しくないよ」
「おじいちゃん、パパ、シンイチロー、マイキー」
「家族がいるから寂しくないよ」

そんなことを言いながらパパに頭を擦りつける。

ふと顔を上げるとパパは涙を流しながら、

「そうだね、私にも素敵な宝物が残っていた。」

そう言って笑っていた。

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海百合クラゲ(プロフ) - これは、面白いぞ…!もっと伸びてくれ!!!!!!! (2021年6月6日 17時) (レス) id: a38a157b30 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月狐 | 作成日時:2021年5月28日 13時

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