Honey【葵ゆうた】2

wink２５ ページ2

「Aちゃん！次移動だって！」



後ろから声がかかる。



そちらを振り向くと、かすかに夏の日の香りがした。



衣更A、中学二年生。
夢ノ崎学院に特例でプロデューサーとして通っています。



私の実の兄は、同じ学院の二年生のアイドル衣更真緒。



そして私を呼んだのは…



「ゆうた先輩。分かりました。」



葵ゆうた先輩。
同じ学院の一年生アイドル。



中学の時、落ち込んでいる私を慰めてくれた人。
で、私の彼氏。



と言っても、付き合い始めたのはつい最近なんだけどね。



そんな彼には



「ゆうた君にAちゃん！これから移動〜？」



「げっ、アニキ…」



双子のお兄ちゃんがいます。



瓜二つの二人ですが、なにかと違うところもあるみたいで。



「今日の昼は一緒に激甘メロンパンね！」



「なにいってんの！今日は一緒に激辛ラーメンでしょ！」



そんな言い争いを始める二人。



でも二人とも、一緒に食べる前提なんだね。



ふふっ、やっぱり仲いいんだ。



こんな日常がなによりの幸せ。



私はまだ争っている二人を横目で見て、廊下をあるきだした。
ふと、グランドの方から大きな掛け声が聞こえた。



「あ、そっか。三年生は練習だっけ。」



窓からのぞくと、三年生の先輩方が学ランを着て頭にハチマキを巻き、大声をだしていた。
季節は夏。



私達アイドル科も、体育祭に向けて練習を始めている。



夢ノ崎学院の体育祭は、普通科やアイドル科など、すべての学科が一緒になって行う。
だから普通科の生徒にとっては憧れのアイドルに近づける、絶好のチャンスなのだ。



でも当のアイドル達は



「はぁ〜、体育祭なんて女に群がられてウザいだけじゃん！ホントやる気失せる〜」



瀬名先輩の声が聞こえた。
相変わらずだな。あの減らず口は。



りっちゃんも瀬名先輩はめんどくさいって言ってたし、隣にいる仁兎先輩も…



「もう、いずみん！さっきからそればっかり…ホントこの季節はめんどくさいなぁ？」



ため息をつき、やれやれと首を横に振っている。
可愛い。



仁兎先輩は借り物競争？絶対見なきゃね♪



あ、借り物競争と言えば…



「Aちゃん？行かないの？」



ゆうた先輩も出るんだよね…



「…ゆうた先輩。借り物競争頑張ってくださいね！」



「うん。ありがとう！Aちゃんの為に頑張るね！」



ゆうた先輩のガッツポーズを見て、私達は笑いながら教室に入った。

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