11.亀裂 ページ11
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夜も深まった頃、僕は端末を手に人の居ない公園に来ていた。
「もしもし」
《もしもし、久々だな、二宮》
「久しぶりだね、元気?」
《こっちはあの時から変わってねぇよ。そっちはどうだ?》
「とても楽しい日々を送らせてもらってるよ」
僕が電話をかけた相手はかつての"姉妹校"での友人だ。
《で、本題はなんだ?》
「…椎原Aって子、中等部に居ただろう?今どうしてるかなって」
《あー…高等部に上がれば弓道部の主将になれるってくらい腕が良かった子か。》
「そうそう。僕何回か喋ったことあってさ。」
《あの子なら一年前に学園出ていったって聞いたけど》
「…学園を出た?」
《何かあの子本人が問題起こしたとかじゃなくて…桜田って奴覚えてるか?椎原と同じくらい弓道強かった男子》
「桜田くんなら知ってるよ。その子が?」
《そ。理由とかは俺も知らないけど桜田が必要以上に模擬戦で椎原を痛め付けたとかで。桜田は退学処分、椎原は精神的に参ったとかで学園出たとか》
「…そうなんだ」
《しかもあの二人って仲良かったらしいからさ、クラスの子らは信じられないって言ってたぜ》
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パシャッ
「…椎原さん」
『こんにちは、シグレ先輩。』
椎原Aちゃんは、僕を撮影するのが好きらしい。
「その写真どうしてるの?」
『シグレ先輩のファンが喜ぶんですよ。あ、販売とかはしてませんのでご安心ください』
「悪用されてないならいいけど…」
『いやぁ、カメラってのは面白いですね』
僕の隣に座って、最近マイブームのカメラを眺めてそう言う。
「そのカメラは?」
『誕生日プレゼントに桜田君がくれたんですよ。模擬戦でポイント稼いだからあげるって』
「桜田くんが?」
『彼ああ見えて優しいところあるんですよ』
頬を染めて、彼女はそう笑う。
またある日は
『♪〜』
「新曲?」
『いや、私がずっと心の中に留めてる曲です』
「へぇ、桜田くんの音?」
『ちょ、シグレ先輩!』
「ははは!大当たりだね」
『シグレ先輩しーっですよ!!』
彼女は音楽を作るのが好きで、よく【その人の音が聞こえる】と言って即興で歌を作ることをしていた。
彼女が投稿サイトに投稿しなかったその曲は、桜田くんから聞こえる音で作られた曲で。
彼女は桜田くんに恋をしていた。
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作者名:藤宮 | 作成日時:2018年3月3日 17時