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『ま、待って！スクアーロ！ランチアがまだ何か言ってて』
『別に聞かなくてもいいだろォが』
『でも』
『【いつでも帰ってこい】っつってたぞぉ"。これで満足かぁ』
『………………』
今すぐ帰りたい
私は振り向いて、窓越しのランチアに訴えた。
その言葉に甘えさせてほしい。
着く前に生き抜いてる自信がないんです。お願い。殺される。助けて。
私は今まで使ったことのない愛嬌を、ここぞとばかりに総動員させた。しかし返ってきたのは、ただの力無い苦笑いだけだ。
『あっ………』
そうこうしているうちに、窓の景色が横へズレる。
別れの挨拶すらまともにさせてくれないのか。いっそ幻覚使って止めるか。
私が焦りを感じていると、離れゆく景色の中で、ランチアがまた口を開いた。
『(いってらっしゃい)』
きっとそう、言ったに違いなかった。
『ランチア！！』
私が手を振って返すも、もうそれ以上の言葉は返ってこず、そのまま窓の後ろに流れ、ついに見えなくなった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『最後の殺しはいつだ』
2回目の信号で止まっている時、それまでの沈黙がやっと破られた。
車内はリムジン式で、座る並びは、奥のザンザスをスクアーロと私で挟む形だ。
座る感覚はとても広い。
気まずい空気に変わりはない、むしろ私にはよけい気分が悪くなる話だった。
話題の振り方とか、内容とか、色々物申したいことはある。しかし、察してはいた。
聞き返してはダメなんだろうな、と。
『は、半年前………ぐらい？』
私は、研究所でやった殺人以外、手は汚してなかった。だから、最後の殺しは研究所となる。
確か研究所を出たのが雨の降る日が多いから、6月？いや、寒かったから冬なのかはっきりしない。
とにかく、数ヶ月たっているはずだ。
『ブハッ、ガキらしくて結構だな』
『……どういうことです』
ザンザスの笑いのツボが分からない。
そこは笑うところなのか。それともただ馬鹿にされているのか。多分後者だ。
『う"お"おぉぉい……てめぇ、大丈夫かぁ』
スクアーロの方も呆れた顔で私を見ていた。
『何がですか』
『そんなんじゃ、すぐ学校で舐められるぞぉ"』
『それはおかしい』
私の常識が警鐘を鳴らしている。
『おかしくねぇ。オレが小等部のころなんかなぁ、3日に1回は学校のヤツを斬ってたぞぉ"』
『嘘でしょ』
『嘘じゃねぇ。お前が行こうとしてる所はな、そういうゴロツキばっかだぁ』
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作者名：杞憂 | 作成日時：2015年8月20日 22時
