【第5人格】籠の鳥【短編集】 (ページ4)

今日:11 hit、昨日:10 hit、合計:15,434 hit

Ⅲ ページ4

リッパーside

彼女の反応は、いつもとても可愛らしかった。
笑顔も、怒っている顔も、泣き顔も、どの表情も愛しかった。

もっと色々な表情を見てみたい。

彼女に出逢ってから、毎日そう思うようになった。

どうしたら、彼女が僕の事を見てくれるだろう。どうしたら、彼女の色々な表情をもっと見ることが出来るだろうか。

そして、私は考えついた。

彼女の嫌がる事をしよう、と。

そうしたら、きっと彼女の悲しそうな表情、怯えた表情、不安そうな表情を見る事が出来る。
盗った物も、最後にさりげなく返してあげれば、彼女の安心した顔も見られる。

しかも、人間は嫌な事の方が記憶に残りやすいとどこかで聞いた事がある。

彼女の表情も見られるし、私の事を印象深く彼女に焼き付ける事も出来る。

我ながらなんて良い考えだろう。

毎日毎日、彼女の嫌がる事を考えては、それを実行してきた。

今日は、早起きな彼女にいつもよりまだ可愛いと言える悪戯をした。彼女の驚いた表情も、見てみたかったのだ

その後に、彼女から予想外の言葉を貰った。
「そろそろやめて貰えませんか、こういうの」と。
そう睨みながら私に言って、中庭を出ていったAに、もう口角が吊り上がるのを抑えられなかった。

いいですよ。A。その表情、とても素敵です。
もっと、もっと、もーっと嫌がってください。
そして、貴女のその頭に、私の存在を強く焼き付けて。

さて、明日は貴女にどんな事をしようか。