黒服の秘密のお仕事

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高校卒業の年の夏休みから
宴会ホールスタッフの派遣会社でバイトを始めた

それまでも飲食店でバイトしてたから
時給につられただけだけど

接客業のレベルが違って

洗礼を受けた

姿勢、話し方、笑顔の品格、サーブの仕方、皿持ち、お盆の扱い、ドリンクの持ち方まで

何もかもが最高レベルなのに

強烈に刺激された


一つ一つクリアしていく度に
ホテルの接客にハマって

受験せずにそのまま働くことを選んだ

修行をして
今のホテルに働けるレベルになって
また下っ端から修行

会場も最初は個人規模の30人クラスの担当から
中ホール、大ホール
そして貴賓館
政界や芸能界で使われるこの会場で

フロア係からチーフへと
夢中で働いて
気がつけば25歳になっていた

ホテル側の社員はスーツにネクタイ

会場を取り仕切る専属派遣は
黒服と呼ばれる
黒いパンツスーツにスカーフのリボン

フロア係の派遣はワンピースにエプロン


ワンピースで修行して
初めて黒服を着れた時には

感動して泣いた


そして
先輩からお声がけシステムを受け継いで
一年

接客面の仕事から
お客様の事情や内面のフォローに回っていた

モニターフォローの直気とペアになって
今までトラブルは無い

奇跡だ


でも今日もそうとは限らない

直気からの指示で酔っていた女の子を回収して

モデル事務所の責任者へと引き渡す



次のお声がけは…永瀬廉様

永瀬廉様もシステム利用が多い方だ


発見し正面から近づく
目が合い、頷きを確認して

少し離れた人だかりの岸優太様へと視線を向ける

こっちは同年代の友達かな…
若い男性の輪の中にいらっしゃる
神宮寺勇太様と高橋海人様とも一緒か

岸優太様と目線が合うと笑顔で逸れた


大丈夫ってことか
なら永瀬様の呼び出し文句は…

永瀬廉様の後ろへとまわって

「お話中失礼致します、永瀬廉様へのお届け物の確認をお願いしてもよろしいでしょうか？」
「あ、届け物？何やろ…ちょっとすみません、見てきます。また一緒の機会があればよろしくお願いします」


会場のドアを開けて
エスコートする

「ではドリンクお持ちします。先程、平野紫耀様を案内致しました」
「ありがとう平野さん」

一礼して見送る

優雅に見えるギリギリの速度で歩き

ドリンクを持って控え室にノックする

中から声が確認出来て


「失礼致します。お待たせ致しました」

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