黒服の秘密のお仕事

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「失礼致します」

中に入ると永瀬廉様が座った椅子の横に
小さなテーブルがすでに置かれていた



「セットが間に合わず申し訳ございません」

二人に交互に目線を移しながら

「いや、俺らがどこに座るかわからんもんな。俺が来たら紫耀がやってくれた」

やっぱりか



平野紫耀様は誰か居るところでは
先回りしてくれてる

本当に周りをよく見て
いつまでも変わらない優しさを持っていらっしゃるのが

芸能人としては変わっている



……誰も居なくても手伝わなくて
ドーンと構えててくれていいのに



実のところ
イメージが大事な有名人は
待つのに慣れていない頃、最初は手伝おうとする

だから
「私共の仕事ですから」
と言ってわかってもらって
してもらう事に慣れてもらう

だんだん人を動かす事に慣れて
任せてくれる人は芸歴が長いし

ドーンと構えてくれる


こちらもプロとして胸を張れる



でも平野紫耀様は

私に仕事を
まだ任せてくれない


まだまだ頼りないってことか



「平野紫耀様、いつもありがとうございます」

永瀬廉様のドリンクをセットして
平野紫耀様に向かい一礼する

「いえいえ、僕もいつも助けてくれてありがとう…平野さん」





笑顔に
見蕩れてる場合じゃなかった

「それではゆっくりとおくつろぎ下さい。20時30分の先生のご挨拶を知らせに参りましょうか？」

二人は時計を確認して

「いや、それまでには戻るわ」
「かしこまりました。また会場スタッフにお声がけ下さい」

一礼して部屋を出る


戻りながら気合いを入れ直す



今日のお声がけはKing&Princeさんだけだ

岸様、神宮寺様、高橋様は
もぅバラバラに動いていらっしゃる

時計を確認して
それぞれの相手を覚えて
今から15分
手元の時計が震えるようセットする




芸能人て大変なお仕事ですね

煌びやかな世界で



人目がある限りお仕事だから



カメラの外に居ても


気が抜けないなんて

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