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「ぁぁ〜…あ、そうそう、お鍋の火かけっぱなしやった、いっけね。じゃ」
「…あっそ」
「…それと洗濯機も回しっぱやった、いっけね。じゃ」
「…だから?」
「ぁぁ〜家の鍵かけ忘れた、じゃ」
「……ゆう」
何で怒ってるん…
いやや……もう…
「……紫耀さん…も…怖ぃぃ…」
視界が滲んでドアが見えない
後ろに居るはずなのに
目の前には居ないのに圧がかかる
掴まれてるのは腕と近い声だけ
「……わかった…優しくしたるわ」
ゆっくり後ろを向いたまま
引き寄せられる
甘くて温かい
抱きすくめられて
頭を撫でられる
「…よしよし。も〜怖くないよ…大丈夫…も〜怖くない…も〜大丈夫な」
背中が全部あったかい
紫耀さんの腕で身体がとらえられ
反対の手は頭を髪の毛を優しくなでる
身体の強ばりがほどけていく
滲んだ視界が晴れていく
こぼれた涙を
「…涙も拭ったろうな…」
頭に手を添えられ
瞳に紫耀さんの唇があたる
「…ほんまにしょっぱいねんな…涙て」
そのまま流れを唇が辿っていく
瞳から頬、顎へ
紫耀さんの顔が後ろへ戻り
反対の瞳から頬へと…
ビックリしすぎて
「……なんや…も〜泣かへんの?」
「ぉぉぉぉおかまいなく…」
笑った紫耀さんの顔が頭の上にのる
背中はあたたかいまま
身体も腕を絡められたまま
動けない
「……で?なんで着信拒否してるか、聞かせてくれるんやろうな」
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作者名:しろ | 作成日時:2021年11月30日 23時