04 ページ11
ｰｰｰｰ
｢･･･久しぶりに行ってみようかな｣
どうしてそんなことを思ったのか、
自分でもよくわからない。
気づいたら、あの鳥居の所にまで来ていた。
まるで導かれるように。
あの日と同じ、茜色の空。
昔おばあちゃんに教えてもらった通り、
鳥居の前で頭を下げて、
真ん中を通らないように奥へと進んだ。
｢･･････わぁ｣
目の前には変わらない景色。
まるであの日のまま時間が止まっているようだ。
(変わってない･･･)
｢変わらないね｣
｢え･･･｣
不意に後ろから聞こえた声に驚いて振り返る。
そこには綺麗な緑色の髪をひとつに結わえた
男性が立っていた。
｢あ、あの･･･｣
｢驚かせてごめんね。
小さい頃に会ったことがあるんだけど
さすがに覚えてないよね｣
｢････。すみません、全然覚えてなくて｣
｢いいのいいの｣
柔らかい笑みを浮かべた男性は境内へと腰を下ろし
空を見上げる。
｢綺麗な夕焼けだね｣
｢！･･････ほんとだ、空が真っ赤･･･｣
見上げた空は今までに見た事ないくらい赤く染っていた。
｢あの、昔って･･･｣
｢君が小さい頃。ここで迷子になって泣いてたんだ｣
｢･･･なんかちょっと恥ずかしいなぁ｣
｢まぁ君は小さかったしね｣
｢･･･？、あっもう帰らなきゃ！｣
彼の言葉に少し引っ掛かりを覚えたけど
すっかり暗くなり始めた空に慌てて立ち上がる。
｢日が落ちる前に山道抜けなきゃ･･･｣
｢そっか･･･。惑わされないように気をつけて。
またね｣
｢･･･？･･･はい、また｣
振り返った先の彼は境内でにこやかな笑みを浮かべて
手を振ってくれている。
小さくお辞儀をして足早に神社を後にした。
｢あっ、名前聞くの忘れてた･･･。
今度あった時にでも聞こうっと｣
どこの誰だかわからない彼。
だけど、また会える。そんな気がしていた。
(そういえば･･･
彼、小さい時に私に会った事があるって言ってた･･･。
迷子の時って、あの時･･･)
｢･･････、あれ？｣
ピタリと止まる足。
目の前には見慣れない景色。
背の高い草木。
真っ黒な空。
静まり返った空気。
まるで動物も虫もいないみたいな･･･。
(この感覚･･･どこかで･･･)
一気に押し寄せる不安を誤魔化すように
ぎゅっと手を握る。
カサカサと小さな音。
ザワザワと騒ぐ空気。
静かなはずの周りがやけに騒がしい。
ここにいちゃいけない、心の中で警笛が鳴った。
ｰｰｰｰ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 107人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：そすんさー | 作成日時：2018年12月8日 6時
