十話 しろつめくさ ページ10
もうすぐ中間テストだ。といっても、1年生最初のテストは、ほぼ中学の復習みたいなもので、それほど難しくないらしい。
それでもまあ中学の時よりもテスト期間は長いし、テスト期間1週間前は全ての部活が休止して、みな勉強に励む。が、私は違った。
土曜日の朝、私はポチ公前で待ち合わせをしていた。
少し前に買った夏用のワンピースを着てみた。今日の少し汗ばむ陽気にはちょうどいい。
カラカラと下駄の音が聞こえてきて前を向くと
「やあお待たせ」
椿さんだ。
「なんか、雰囲気いつもと違うね…?」
「いつも制服姿でしか会ってませんからね!私の私服は貴重ですよ!」
「ああ、なるほどね。似合ってるよあやめ」
恥ずかしげもなく言うもんだから、流石に少し照れてしまう。
「あ、ありがとうございます」
「じゃあ行こっか」
今日は寄席を見るために小さな劇場へと入る。休日だからか、結構人が入っている。チケットを買って、真ん中辺りの席に座る。
「今日の噺家さん知ってます?」
「うん。何度も通ってるからね。東京で活動してる人達は一通り聞いたことあるかな」
「え!すごいですね!私は子供の頃に父につれて行ってもらったので、古い人しか知らないですけど…」
「あ、でも今日は新人がいるみたいだよ」
「へーそれは楽しみですね」
幕が上がる。大勢の人と、遠慮なく笑い合う。この空気感、大声を出してもいいんだっていう安心感。ああ、楽しいな。
膝を叩きながら大笑いする椿さんも、この場では様になっていた。
___
大笑いしてお腹がすいたので、劇場の近くの蕎麦屋さんに入ってお昼ご飯を食べる。
「あー!面白かった!」
「新人さんの新作落語面白かった〜。最初から新作でぶつけてくる人ってすごいですよね」
「そうだね。大抵は古典落語で場馴れしていくのに。あの度胸がいいね!あの子気に入っちゃった」
「私も久々に聴いてとっても楽しかったです。お父さんの持ってるDVD見てみようかなあ」
「え。何それ僕も見たい」
「じゃあ一緒に見ましょうよ〜」
ズルズルとそばをすすりながら、会話に花を咲かせる。
「僕家に行っていいの?」
「?逆になんで駄目なんですか?友達だからなにも問題ないでしょ」
「…家族が黙っちゃないでしょ」
あ、そうか。高一の娘が成人男性のお友達を家に招くと色々語弊が生まれるのか。
「じゃあバレないように狐姿で来てくださいよ。」
「……ま、行けたらそうするよ」
なぜか少し口篭る椿さんに私は?を浮かべるのだった。
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南条(プロフ) - 彩弥 Ayamiさん» コメントありがとうございます!気に入って頂けて嬉しいです。更新頑張って行こうと思います〜! (2020年11月4日 23時) (レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
彩弥 Ayami(プロフ) - コメント失礼します…。やっぱり椿は可愛くてかっこいいですよね…♪ニヤニヤしながら読ませていただきました(笑)更新楽しみにしてますね! (2020年10月31日 20時) (レス) id: ea9a1583d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:南条 | 作成日時:2020年6月3日 11時