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黒幕 ページ7

「…父上…?」
ボソリ、と呟いた声は一番近くにいた人…シャープには聞こえたようで、「え?」と少しビックリしていた。

「伊吹君…大丈夫…?ここには僕達以外誰もいないよ…?ねぇ、ワカル…?」
「えぇ…部外者は入ってこれないようにしているけれど…」

おかしい。だってさっきそこに父上が…。
いや、おかしいのは俺か。でも、おかしいのは何処からだ、何処から狂っているんだ…?

「もしかして、伊吹は幻影でも見たんじゃあないのかい?」
椿の言葉を聞いて、辻褄が合った。そうだ、俺は、夢を見て、そこから父上の幻影を見たんだ。あぁなるほど、とひとりでに納得してよっこらしょ、と立ち上がった。
「あー…その、迷惑かけて悪かった。多分、大丈夫だ。」
「多分とはなんじゃ、多分とは。まぁ安心せい、ここには伊吹を咎めるやつはおらんよ。」
「…あぁ。」
適当に会釈を交わしてスタスタと家へと帰る。そうだ。ここは、俺を人として接してくれる人が沢山いる。俺は。もう。人形じゃない。

……
………

「あーあ、つまんねぇなぁ。」
よっこらしょ、と傷口から出る。今回のお目当てはシャープではなく、伊吹という人間とやらだ。
「折角狂わせてやったのに、なーんで正気に戻るかねぇ…」
まぁいいや、とまた先程のように取り付こうとした時だった。

「…何してるの。」
うげ、最悪だ。よりにもよってシャープが起きちまった。まぁいいやと思ってくるりと後ろを向いた。
「何って、そりゃあ、こいつに悪夢をみてもらおうと思ってなぁ。」
「ふざけるな。伊吹は関係ないだろ。」
「必死だねぇ。アイツ、ちょーっと悪夢を見せたらあそこまで狂っちゃうなんてな。笑っちゃうぜ。」
アハハと笑う。シャープは俺を睨み向けるが、視線は合わない。合わせてくれてもいいじゃないか。と思いつつ、伊吹に取り付こうとする。
「おいお前…!いい加減にしろ!!!伊吹は何もしてないだろう!?」
「まぁまぁいいじゃねぇか。さーて次は何を_」

「ん…?どうしたんだシャープ、大声出して。」

やべっ、起きちまった。俺は急いでシャープの傷口に隠れ込む。
「あ、あぁ、何でもないよ。ゴメンね。起こしちゃったね。」
「いや…大丈夫だ…気に、するな…」

「…寝たか?」
ひょっこりと顔を出して確認する。はー、ひやひやしたぜ、と一息ついてる時に包帯を巻かれてしまった。こうなるともう出れない。

「あーあ、こりゃあまた次の機会にするしかねぇなぁ。」
「…次は何にしようかな。」

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作者名:椿 | 作成日時:2018年6月5日 19時

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