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男子会…? ページ2

「いい音だな、それ。」
ふと、伊吹が口を開いた。視線は音を奏でていた者、シャープという男の方を向いている。彼は楽器が好きなようで、よく部屋の中にあるピアノを弾いている。
「本当かい?嬉しいなぁ。」
ピアノ椅子に座りながら伊吹の方に体を向けてニコリと微笑んだ。そして足をゆらゆらと揺らしている。…それで会話が終わってしまった。伊吹もシャープも、会話能力があまりないようで、言葉のキャッチボールがすぐに止まってしまう。どちらも、この状況をどうにかしたいが、如何せん話題が思いつかない。この状況が数十分続いた時に、ようやくシャープ口を開いた。
「…ねぇ、伊吹くん。」
「あ?」
「男子会しよう、男子会。」
「…はぁ?男子会…?男は俺らしかいないのにか?」
まぁいいけどよ、とメッシュの髪を弄りながら伊吹が言った。シャープは少しだけ嬉しそうにまた足を動かした。
「…で?何をすんだ。」
「うーん…恋バナ、とか?」
はぁ?と伊吹のツッコミが入る。まぁこういう時にこういう話をするのは当たり前のような感じだが、まさかシャープから"恋バナ"という単語が聞けるとは思わなかったのであろう。伊吹が"恋バナ"といってもおかしいのだが。
「待てお前、考えてみろ。女子に俺らどう思われてると思う。」
話はそれからだ。と伊吹が言う。ただ恋バナをするだけなのになんでこんなに真剣な話になっているのだろうか。
「女子に…?うーん…僕は根暗っぽいって言われてそうだなぁ…」
「俺は…そうだな、"お化けみたいで怖い"みたいなこといわれてそうだな。まぁ分からなくはないが。」
そしてしばらくの間沈黙が続く。2人は視線を合わせたあと、はぁ、とため息をついた。…悲しいものだ。自分で言っておきながら、考えてみるとマイナスなことしか出てこない。逆にプラスなことを答えろ、というのが難しいのだ。
「…悲しいね、僕ら。」
「あぁ。少し泣けてきそうだぜ。」
もう一度、今度はとても深いため息をつく。楽しい楽しい男子会の筈が、こんなにも悲しい男子会になってしまった。
「…おいシャープ。なんか弾け。気分転換だ。」
「なんかって…まぁいいですけど…。」
くるり、とピアノの鍵盤の方に体を向けて暫くぼーっとした後、鍵盤に指を置き、心地よい音色を奏でた。すると先ほどの憂鬱な気分はすっかりどっかに行ってしまった。
「(あぁ、やっぱり、音楽はいいな。)」
「(音楽はこういう効果もあるのか…。)」
曲を弾き終えたあと、2人で微笑みあった。

夢→←愛



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作者名:椿 | 作成日時:2018年6月5日 19時

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