愛 ページ1
Q. 貴方の愛言葉は？
A. ｢愛、だ。｣
その男は見た目は人ならざる者だった。グチャグチャに爛れた右半身の皮膚、本来の髪色とは違う赤の髪が混じっている。そして、痩せぎすな体。どこからどう見ても、化け物である。
しかし、性格は化け物ではなかった。寧ろ、とても優しいのだ。そっけない態度を取るが、本当は人の事を第一に考えている、とても人として見習いたい性格である。
その男の名を｢菱川 伊吹｣という。
…さて、ここで一つ、｢菱川 伊吹｣の話をしようではないか。
伊吹の両親は､権力者であった。権力だけではなく、金も、人も、何もかもを持っていた。そして、子にも恵まれた。…筈だった。もちろん、子供は産んだ。しかし、その子は忌み子だった。菱川の人達とは違う目、薄い茶色の髪に混ざる赤い髪。両親はすぐさま、その子供を隠し｢流産してしまった｣と嘘をついたのである。伊吹はとある個室に何十年間も閉じ込められた。
否、ずっとその個室にいた訳では無いが、まぁ長々と話しては疲れてしまうであろう。物語が動くまで、割愛させてもらう。
ある日のことだ。忌み子は暑さに耐えられず目を覚ます。視界に広がっていたのは火の海である。忌み子とて、考えられないわけではない。すぐさま扉に近づき、｢火事が起きている。ここから出せ｣と叫んだがすぐ近くに火があった為、喉を火傷してしまう。なんとかして出ようと試みたが如何せんうまく行かない。結局、右半身が火に包まれてしまったのである。忌み子はそれでも生きることを諦めず、部屋の中から出る。
その日は月がとても綺麗な夜だった。
｢…これが俺の過去だ。そんな聞いてても面白くねぇだろ。｣
まさにそのとおりだ、と自問自答する。こんな話、誰が聞いて喜ぶのだろうか。…と思っていたが、この4人はとても面白かった、と言いたそうな顔をしていた。全くこいつらは、俺の話のどこが面白かったのだろうか。
｢…っ俺は話し終えたぞ。次は誰だ。｣
｢伊吹君が指定してよ。誰のから聞きたい？｣
｢そうだな…ここは同性のシャープからで。｣
｢僕かい…？僕もそんなに面白くないけど…｣
こうして小さな部屋の中でそれぞれの過去の話をする。それぞれの過去の話は、また詳しく書くことにしよう。
なにはともあれ、忌み子と呼ばれつづけた男は、今は｢一人の人｣として皆から愛されているようだ。
めでたしめでたし。ってね。
(後書き/文字数がすくねぇ！手短に行きます！次はシャープ君と(文字数))
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作者名：椿 | 作成日時：2018年6月5日 19時
