その雪寄草に、口付けを。 / 神里綾人 (ページ15)

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其ノ拾参ページ15

私の両親は政略結婚でした。

お母様は有名な武家出身で綺麗な黒髪を持つ、美しい人でした。

お母様の刀を振る姿はとても綺麗で、私の憧れでした。

お母様は好きなことをやるのが一番で、子供に無理強いはしたくないと考える人でした。

それに対してお父様は男らしさ、女らしさを重視して私たち姉妹にはお筝やお習字、礼儀作法などを教え込もうとしていました。

ですが、私はお箏を全く上手く弾くことが出来ませんでした。

そもそも演奏をすることが好きではなく、練習の時間が苦痛でそのうち弾かなくなってしまいました。

お習字だけは出来たけれど、座って何かをするのがあまり好きではありませんでした。

そんな私とは対称的に露はお筝の上達が早くて、なにより楽しそうでした。

露はお淑やかでまさに父の求める女らしさを全て持っているような子でどんどんお父様に気に入られていきました。

そして私はお母様のように刀を振りたいと言ってお母様にはよくお稽古をしてもらっていました。

でもお父様は女が刀を持つなんて野蛮だと言ってそれをあまりよく思っていなくて、それが原因で両親が喧嘩をすることもありました。

お母様はいつも貴方が好きなことをやればいいのよと言ってくれていたけれど、私が原因で両親が喧嘩をしてどんどん仲が悪くなっていくのをみるのはかなり辛かったです。

でもお母様は私をそのままでいいと言ってくださるし、露は私の事をお姉様と慕ってくれます。

だから私はお母様の言う通り好きなことをしていました。

でも、私が18歳の誕生日を迎えた次の日の朝、お母様の姿はどこにも見当たりませんでした。

私の部屋の前に1枚の封筒が置いてあり、そこにはお母様からの手紙が入っていました。

『Aへ。

貴方を家に置いていくのを許して頂戴。

不甲斐ない母でごめんなさい。

貴方はこれからも貴方らしくいてね。

　母より』

私の両親は、私が原因で、離婚してしまいました。

見た目がお母様に似ていて、お母様に教わったように刀を振る私はきっとお母様を思い出させてしまったのでしょう。

お父様はどんどん私に対するあたりが強くなっていきました。

なんでお母様は私も連れて行ってくださらなかったのだろう。

自分のやりたいことなど抑えて大人しくお父様の求める娘になる努力をするべきだったのか。

私は時々分からなくなってしまいます。