検索窓
今日:31 hit、昨日:4 hit、合計:125,593 hit

優しいマジックショー ページ9

彼は部屋に入ってきたかと思えば、手元にハンカチを被せてカウントダウンを始めた。

「3、2、1……!」

ポンと音を立たかと思えば、彼の手には一輪の花が現れていた。

「な、何……?」

「ふふっ、驚いた顔も素敵だ。この花は貴方に差し上げます。」

「え、あ、ありがとう……。」

戸惑いながらもその花を受け取ると、キッドはまた楽しそうに笑った。

「……そんなに面白いですか?私、もしかして変な顔してます?」

キッドはいえいえ、と呟いてまた笑った。

「違いますよ。コロコロと表情を変える貴方が可愛らしいと思っただけです。」

「はぁ……、そうですか。」

「ええ。……あ、そうだ。せっかくですし、私と共に今宵の空を巡る旅に出ませんか?もちろん、貴方の安全は保証いたしますよ。」

私は行くなんて一言も言っていないのに、命綱を体に固定されて横抱きにされた。

「では、行きますよ!」

「ねぇ、ちょっと!待って無理!いや!怖いってばぁぁ!!」

私の言葉も聞かずに、彼はベランダから飛び降りた。私の部屋はそこそこ上の階だから、普通に落ちたら確実に死ぬ。けど、少し自由落下したかと思えばハンググライダーが風を受け、ふわりと宙に浮いた。


「……どうですか、初めての夜間飛行は?」

「死ぬかと思いましたよ……。確かに風が心地良いですけど。」

「ふふっ、ご満足いただけたようでなによりです。……このまま飛ばしますよ!」

そう言って、しばらくの間夜景を見ながら空を飛び回っていた。キッドは時々話を振ってくれたが、どんなに話題に困っても何があったのかだけは聞いてこなかった。



「……だそうですよ。流石にAお嬢様も、この話はご存知でしたかね?」

「……あの、また私の勝手な想像かもしれないんですけど、私には貴方が優しい人に見えます。なのに、どうして怪盗なんてやってるんですか?今だって、こうして私の気を紛らわそうとしてくれて……」

すると、彼の人差し指が唇に当てられた。口では言わないが、彼の目がもう喋るなと言っているようで、言葉が出てこなかった。


「……察しが良くて助かります。このような話、美しい景色には似合いませんから。」

「じゃあ、この景色に合う話って何ですか。」

「んー、そうですね。例えば、貴方の恋煩いの話なんてどうです?貴方に話す気があれば、ですけどね。」

キッドはにこりと笑い、私を試すように見てきた。まるで、私が家に入れる時に迷っていたことを知っているような顔で。

笑顔のマジック→←降谷さんに会いたい



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (206 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1303人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (4月27日 22時) (レス) id: de2c41cb59 (このIDを非表示/違反報告)
天然石 - 続き書いて (2021年11月11日 19時) (レス) @page30 id: 9e1c69280d (このIDを非表示/違反報告)
焼きプリン - とても面白くて今日一気見しました!!!続きがとても気になります!楽しみにしてます。頑張ってください! (2021年3月25日 20時) (レス) id: ecb566eb91 (このIDを非表示/違反報告)
す だ(プロフ) - 頑張ってください!たのしみにしてます (2020年7月14日 2時) (レス) id: ebbf33f874 (このIDを非表示/違反報告)
月乃(プロフ) - 花束さん» ありがとうございます!そう言っていただけると励みになります!頑張ります! (2020年4月24日 12時) (レス) id: 34cc67c93b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:月乃 | 作成日時:2019年10月6日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。