【歌い手】年上彼女にスポットライトを。【大型コラボ】 (ページ13)

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【うらた】エピローグにはまだ早い/星結ページ13

＊side Urata

Aは壊滅的に騙されやすい。
今も、履くだけで5キロ痩せるという、10万円のパンプスを買おうとし、"偶々"通りかかった俺が無理矢理引き剥がしてきたところだ。
当のA本人は全く騙されてなんかないと自信満々な様子で、帰り道にある雑貨屋のショーケースに食いついている。

そういうところも可愛いとは思うけれど、俺が心配しているのは、こいつがもうすぐ20になるってことだ。
Aはミッション系の5年制女子校に通っていて、あと数ヶ月で卒業だ。
なのにこの有様。
通販、テレビショッピング、宗教勧誘、何から何にまで食いついていくもんだから連れて帰る俺は相当苦労してると自分でも思う。

でもこの関係をやめないのは、俺がAを結局放っておけないからだ。
2年の年月が空いていても、それを埋め、越えていけるくらいに俺は多分大人だし、Aは幼い。
ちょうど良い関係性だと我ながら思った。

実際のところは、Aが何にでも手を出すのを俺が過保護ともいえる独占欲に似た何かで止めている、そんな感じだ。

「渉、私このお店見たい」
「…おばさん心配するぞ」
「いいよ。今日遅いって言ってたもん」

Aの家は共働きで、基本的に、俺の家に遊びに来るのが日常茶飯事レベルで起こりうる。
そんな環境で育ったからか、Aは俺以外には強烈な人見知りを発動する。
端正な顔立ちと雪の様な白い肌、整った容姿を持って生まれたAに寄りたい男は山ほどいたろうに。
俺がそれをすべて跳ね除けたものだから、Aは余計に人見知りを拗らせた。
…それでいいと思える俺も俺で、おかしいのかもしれないな。

「…これ、綺麗」
「…指輪？」
「そ。ガラス細工って私好きなの」
「ガラスなのに？」
「ガラスだから好きなの。変な怨念篭ってなさそうで綺麗じゃない？」

YESともNOとも言えず、ただAの独特の世界観や価値観、哲学理論みたいなものに感心した。
丸っ切り理系の俺には少し難しすぎる気がしたが、Aが良いならそれでいいんだろう、と納得はした。

「…おい、もう6時だぞ」
「閉店まで居る」
「あと1時間も居る気かよ…」
「…だめ？」
「やめとけって」
「じゃあ、渉の家行ってもいい？」
「いいけど…」
「ひとりって、寂しくってさ」

2人、その言葉だけで何か特別なものを感じてしまうのは、俺の持て余した恋情の切れ端なんだろう。