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ダンスが始まった。
ドラコは宣言通り完璧なリードで、2人のダンスは明らかに他の生徒から抜きに出ていた。
だがドラコは、それどころではなかった。
(どこの誰だか知らないが、人の婚約者を誘うような真似をーーーー)
踊りながら、名前も姿もろくに分からない多くの敵に対して、ドラコは対抗心を燃やしていた。
(真緒は僕のものだと、絶対的に僕のものだと分からせてやらないといけないらしい…)
真緒「…ドラコ?」
腕の中の真緒が、ドラコを見上げる。
心配そうなルビーだ。
真緒「険しい顔、してたわ」
「今回君を誘った輩に、腹が立ってねーー君は僕のものだと、分からせてやりたいだけさ」
ドラコはそう言って、曲が終わった瞬間真緒のルージュに長いキスをした。
ヒューと茶化す口笛や野次。
ドラコは真っ直ぐに真緒だけを見つめキスを施した。
真緒の方は、最初は目を見開いてドラコを見たが、顔を赤らめ目を閉じてしまった。
真緒「…恥ずかしいわ、ダンスフロアから降りましょう」
続けてもう1曲踊りたかったが、頰を染めた真緒はもはやヴァンパイアではなくただの可憐な花嫁になってしまったので、渋々椅子のあるところへエスコートした。
「ドリンクを持ってくるよ」
真緒「ありがとう、なんでも良いわ」
ドラコは女性の多い席に座らせ、足早に飲み物を取りに向かった。
素早く戻って来ると、近くにいた女子生徒と話していた真緒が笑顔で立ち上がる。
顔の熱も引いたらしい。
真緒「次の曲は踊りましょう」
「勿論」
次の曲は、コンチネンタル・タンゴ。
1曲目のワルツとは違い、ホールドの時点でかなり深く密着する。
2年前のダンスパーティー前にドラコが何度か真緒に教えたことのあるタンゴ。
タンゴの、他の男に取られないよう囲むようなホールドがドラコは好きだ。
真緒「…どうしよう、うまく踊れるかしら」
不安げに見上げてきた彼女が堪らなく可愛い。
「大丈夫、僕に身を委ねるんだ」
ドラコは優しくーーだがしっかりと彼女をホールドしてリードを始めた。
どことなくぎこちなかった真緒も何となく思い出してきたのか表情が解れてきた。
そしてドラコは見せつけるように踊る。
他の誰にも、彼女をこんなにも美しくはリード出来ないのだ。
真緒がドラコに密着したまま、ふわりと微笑む。
完全に、ドラコに身を任せている。
ドラコは満たされた気持ちでダンスを終えた。
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作者名:M.S | 作成日時:2019年9月7日 18時