・ ページ25
.
『やめて……
話しかけないで！！』
頭を手で覆って、背中を必死に丸めて
何かから自分を守らんとするその姿を、客観的に見ていた。
……夢と理解した夢をよく見る
明晰夢というらしい。
自分でコントロール出来る
なのに、私はただその辛さを繰り返しリアルに体験するだけで
いつも何も出来ない。
ぼろぼろと、水たまりが出来そうなくらい涙をこぼす私と
私を囲うのは複数のポケモン
姿は分からないけれど、縮こまる私に何かを言っていた。
私は悲痛な声をあげて、泣き苦しむ私自身を止めるわけでもなく
一緒に苦しくなりながら、ただ呆然と見ていた。
でも、その苦しさに耐え難くなり
私も同じように膝から崩れた。
ふわっと、その落ちるような感覚に
ビクッとして
気付けば天蓋が視界いっぱいに広がっていた。
『…………ッ
けほッ……！』
喉が詰まったような気がして、反射的に咳が出たが
息をゆっくり吸えば、すぐに治まった。
『夢でも、夢じゃなくても変わらないや……』
私は額の汗を拭って、窓を見ると
もう明るくなり始めていた。
『……二度寝の気分にもなれないし、起きるかぁ』
私はだるい体を起こして、寝汗をシャワーで流して
クローゼットに入っていた服に着替えた。
『私の趣味の服じゃないけど
お父さんが用意したものより断然マシね……』
鏡の前で服をチェック
膝上くらいのワンピースに、羽織カーディガン
服装は確かに可愛いのだが、私が着るようなものではなくて、少し恥ずかしい
髪を三つ編みにまとめると、ナチュラルメイクを施して
窓際の席に座った。
もうガラル地方の大陸がよく見える
写真で見ていたので、バウタウンだとすぐ分かった。
港沿いに並ぶ商店や、坂に連なる住宅
アサギシティに負けない、大きな灯台
そして……綺麗な海に面した、大きなスタジアム
窓から見てこの規模では、実際に降りたらもっと凄いだろう。
『荷物もまとめたし、大丈夫かな』
私はもう一度、部屋に忘れ物をしていないか確認をして
迎えに来てくれた社員さんに促され、船を降りた。
『んん〜っ！
長かったようで短い船の旅も終わりですかぁ』
「居心地はどうでした？」
『内装はともかく、とても良かったです』
私はそう答えると、観光をする間もなく
駅へ案内されてしまった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 156人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ポケットモンスター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さやか(プロフ) - 初めまして呼んだ開口に何故か「ん？」となってしまったんですけど手持ちポケモンが（キバナ）になってますよ？？ (2022年12月12日 7時) (
レス) @page2 id: 71c5a1ef4d (このIDを非表示/違反報告)
槻みこと(プロフ) - キノコさん» お初のコメント、お待ちしておりました！！事細かに読んで頂き、とても嬉しいです^^ 例の事件については、あと数話で判明致しますので、ぜひ読んでください。 コメント頂き、ありがとうございます！ 頑張ります♪ (2020年4月19日 12時) (レス) id: b9f86bca6f (このIDを非表示/違反報告)
キノコ(プロフ) - はじめまして！お話拝読させて頂きましたがとっても面白いです！私もマツバさん好きなので読んでて｢キャー｣となってしまいました！度々出てくるミュウも凄く可愛いです！主人公ちゃんに過去何があったのかとても気になります！これからも頑張って下さい！ (2020年4月17日 21時) (レス) id: 96e9316664 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：槻みこと | 作成日時：2020年4月9日 18時
