・ ページ3
.
『いた……ッ！』
暗い牢の中で、強く縛られた手首に血が滲む
……目の前にいる複数の男性が、私に何かを言っている。
何を言っているかは分からなくて、ただただ手首が痛い
このまま千切れてしまうのではないか……と
心臓が変にバクバクと鳴った。
『＿＿＿＿＿＿誰か……』
どんなにそう願っても、私を助けてくれる人は現れなくて
このまま……ずっと…………？
そう考えると底知れぬ恐怖が私を襲って
怖くて怖くてたまらなくなった。
･
･
『ッは……っ！
……はぁっ、……はぁ……』
急に高いところから落ちた感覚がしたかの様に、体が跳ねて
同時に明るい世界にいた。
『……？』
私は起き上がってすぐ、手首を見た。
随分薄くなった傷跡があるだけで、千切れるだなんてとんでもない
血すら出ていない、いつもの自分の腕だ。
『……夢……
良かったぁ……
わッ！！』
私は安心で力が抜けて、背もたれに寄りかかろうとすると
どうやら背もたれが無くて、後ろにひっくり返りそうになる。
「……っと」
けれど誰かに支えられ、私はふと顔を上げる
上から覗かれるように目が合ったのは、この街のジムリーダー
……マツバさんだ。
『ごめんね、寝惚けて……』
「……寝起きが悪いのはいつもの事だけど
退院したばかりなんだから、また戻るような事にはならないようにね」
『はーい』
物腰柔らかで、顔立ちが整っている
なのにポケモンバトルが強くて、ジムリーダーなマツバさんは
この街ならず、世界的にも人気が高い。
……まあ、私の彼氏なのですが……。
私達はスズの塔の小道を散歩していたが
退院したての私は、すぐ疲れてベンチで寝てしまっていたのだ。
「それにしても汗が……
嫌な夢でも？」
『え？
ああ……うん
でも、起きたら忘れちゃった』
暗い牢、手首の血……
でも、こうして起きてしまうと夢の恐怖はすぐ薄くなった。
『体力回復！』
私はバッと立ち上がって、マツバさんを安心させたくて笑いかければ
マツバさんも笑って、私の頭を撫でた。
「それじゃ、行こうか」
マツバさんが私の手に指を絡めて
私は少し顔が熱くなる。
まだ慣れないというか……
これもどこか夢心地だ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 156人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ポケットモンスター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さやか(プロフ) - 初めまして呼んだ開口に何故か「ん？」となってしまったんですけど手持ちポケモンが（キバナ）になってますよ？？ (2022年12月12日 7時) (
レス) @page2 id: 71c5a1ef4d (このIDを非表示/違反報告)
槻みこと(プロフ) - キノコさん» お初のコメント、お待ちしておりました！！事細かに読んで頂き、とても嬉しいです^^ 例の事件については、あと数話で判明致しますので、ぜひ読んでください。 コメント頂き、ありがとうございます！ 頑張ります♪ (2020年4月19日 12時) (レス) id: b9f86bca6f (このIDを非表示/違反報告)
キノコ(プロフ) - はじめまして！お話拝読させて頂きましたがとっても面白いです！私もマツバさん好きなので読んでて｢キャー｣となってしまいました！度々出てくるミュウも凄く可愛いです！主人公ちゃんに過去何があったのかとても気になります！これからも頑張って下さい！ (2020年4月17日 21時) (レス) id: 96e9316664 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：槻みこと | 作成日時：2020年4月9日 18時
