からっぽの生徒【躑躅森盧笙】 (ページ3)

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もう、恒例行事らしかった。
今日も例の女子グループに囲まれている。

教室移動中、窓越しに見えた。
Aはいつも通りの笑顔やった。
手に抱えた教材がやけに重く感じた。

───

「A」

放課後、Aはやっぱり教室におった。

「あ、躑躅森先生」

なにか用ですか？と笑顔で尋ねてくる。
俺は苦しくなるのに、
Aは紫と橙の混ざり合った空模様みたいに不思議やった。
掴めない。
一体彼女の心はどこにあるんやろ。

「昨日の話の続きなら御免ですよ」

笑顔を崩さぬいつもの調子。
俺は言葉に詰まったが、
なんとか彼女と話をしたくて、
最近はどうやと聞いてみる。

ざっくりし過ぎだなと自分で思った。

「もしかして先生、遠回しに聞いてますか？」

遠回しというのは例の件だろう。

「そう受けとるってことは、肯定ってことでええか？」
「ちがいますよ」

まさか、と言う風にけらけら笑う。
その笑顔を保ったまま、
かばんをしょって、

「先生、私なんかに構わずに他のことに余力使った方が言いと思いますよ」

そう言い残して教室を出た。