13episode.◇ ページ13
私はからっぽだった。
小さい頃からそうだった。
父と母と姉が一人。
普通の家庭に生まれて、
普通に愛されて育っていた。
だから環境が悪かったんではない。
生れつき、私には感情が欠損していた。
まだ幼稚園にも通ってない頃、
私は常に無感情だった。
多分愛想のない子って思われてた。
その時まではお姉ちゃんの方が可愛がられていた。
別にどうでもよかったんだけど、
ぼうっとしてて、何しても楽しくないから、
普通の幼児みたいに私に絡んで来るお姉ちゃんばかり見てた。
お姉ちゃんのことを観察してると、
お姉ちゃんは私と真逆で常に感情的だった。
駄々をこねて泣きまくれば母に怒鳴られ、
こけて泣いたら心配されて、
不機嫌そうな顔をしてると家族を困らせる。
でも姉が笑ってるときは皆も笑顔だった。
姉が楽しそうだと周りも楽しそうだと思った。
──楽な感情だなぁ。
それからかな。
私は何があっても、どんなことがあっても笑ってた。
人が辛いとか苦しいとか楽しいとか思う基準は全くわからないから、
笑っていればなんとかなった。
何があってもにこにこしてるから強い子だねぇって言われた。
よくわからなかったけどよかった。
笑ってると楽だった。
幼稚園に入ってからも、
小学校でも中学校でも
誰彼構わず愛想を振り撒いた。
やっぱり笑顔は得をする。
ムスッとしてる子達よりも友達が出来やすいし、
先生達からも気に入られやすい。
感情がない代わりに、頭はよかったから尚更。
傍から見たら愛想の良い優等生を演じつづけた。
すごく楽だった。
軽かった。
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作者名:つづみも | 作成日時:2019年12月9日 5時