からっぽの生徒/中編【躑躅森盧笙】 (ページ7)

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Aがいじめっ子のグループに呼び出されよった。
嫌な予感しかせんくて、
怪しまれんようちょっと間をあけて後をつけた。

グループの数人が辺りを警戒するようにしとったから、
なるべく自然に、つけてるの気付かれんように振る舞おうとして、
見失ってしまった。

でも、この経路で行ける隠れ場所的なとこって……

廃棟しかなくないか……？

自分の目星を信じて廃棟に近づく。
木造で取り壊し寸前のボロボロな校舎は
歩くと床が軋んで嫌な音を立てる。

そして意外にも声が響く。
多分誰もおらんからやろうけど。

──「ははは、そうだよね。冗談だよ、冗談」

思った通り、Aの声がする。
……ここでも、笑っとるんかお前は。

──「そんなこと言ってまた逃げる気やろ。そうはさせへん。あたし撮影するから皆AAを丸裸にさせてたってや」

グループの中心人物であろう生徒の高らかな声。
悪質な集団いじめやん。
腸が煮えくり返る心地がした。
瞋恚(しんい)に任せて怒鳴り散らしたかったけど、
それはだめや。

怒鳴るよりも威圧的な態度の方が高校生には効く。
スッと息を吸って顔を覗かせた。

「こーら、こんなところでなにしてるんだ」

生徒の動きが止まった。
俺はその場所に近づく。

「ろ、盧笙先生…！！！」

よってたかってAに生徒が群がっとった。
跨がっとった。

「なにしとる」

──見たらわかるけど。

「あ、えっと………そ、そうそう、Aが着崩しとったからちょっと注意してあげてたんですよ～」
「にしては大袈裟じゃないか？」
「いや～、ちょっと喧嘩になっちゃいましてぇ～」

なんやその言い訳は。
業が煮やされる。
話すだけ無駄やと思った。

「ふーん。で、そのスマホでは何をしてるんだ？」
「あ、え、これは……」
「ちょっと見せてみ」

あっと目を見開く生徒のスマホを取り上げる。
開かれとったのは写真アプリ。
カメラアプリじゃない……
嫌な感じがする。

………やっぱり、遅かったか。
最近の子の機械慣れ怖いな。
証拠が残っとたら裁判所でも教育委員会でも告発してやろう思っとったのに。
どこ探しても、ムービー、写真共に見当たらへん。