51episode.◇ ページ24
木曜日の放課後、先生を待った。
前の通り。
元に戻った私。
今日は一回職員室に戻った先生がここに帰ってきた。
いつも通りにこにこしてるはずの私に先生は違和感を感じてると言わんばかりに首を傾げる。
「躑躅森先生」
改まるみたいに先生の名前を呼んだ。
「どうした……?」
依然として不思議そうな先生は私が次に吐く言葉なんて想像してないでしょう。
「別れましょう」
静かになった。
何の音も聞こえない。
ただ行儀良く背筋を伸ばしてしっかり座ってる模範生を前に言葉を失って焦燥してる先生の様子だけは見てとれた。
ごめんなさい先生。
私は本当に悪い
「な……なんでそない急に……」
「先生、本当は躑躅森先生のこと好きじゃないです。私。でももう無駄な演技疲れたので。さようなら」
にこにこ。にこにこ。にこにこ。にこにこ。
私には笑顔しかのこってない。
そう。からっぽだから。
ほんとのほんとのほんとにおかえり。
先生に手を振って満面の笑顔で教室を出る。
先生は失墜してしまったみたい。
土砂に埋もれて動けないんだね。
憐れ。哀れだ。
私は教室を出て速球に家に帰る……はずだった。
それなのに、
私は何を血迷っているのか、
一体何に未練があるのか地縛霊のように校内を彷徨していた。
ふらふらと、行く当てもなく。
──本当に何をやってるのだろう。
最終的に辿り着いた最上階。
にしても珍しい。
いつもは閉ざされている屋上への入口が
なんで今日に限って開いてるのだろう。
私をそんなに誘い込みたいのか、
唐紅の強い光が扉の隙間から漏れていた。
終着点だな。
直感的にそう思って扉を開いた。
嗚呼、なんて美しい空だろう。
茜色の奥ゆかしい空だ。
感銘を受けてるわけじゃない。
感銘を受けてるわけじゃないのに。
からっぽに戻った。
からっぽに戻ったはずなのに。
なんで……なんでだろう。
笑顔が崩れて顔がぐちゃぐちゃになるのは。
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作者名:つづみも | 作成日時:2019年12月16日 17時