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46episode.T ページ19

楽しい時間ってもんはあっという間に過ぎ去ってしまう。
あんなに楽しそうに笑うAを初めて見た。

嬉しいなぁ。
こっちまで微笑ましくなった。


水族館こんなに満喫したの初めてかもしれへん。
駐車場に向かう足取りはゆっくりやった。
自分らの立場も忘れて、
二人だけの世界。
離れたくなかった。


車に乗り込んで、Aを助手席(となり)に座らせる。
日が沈みかけで、紫と橙の神秘的な境界線を織り成す狭間の中、俺の感情は自分が思ってるよりも慢心しとった。

隣に向かって手を伸ばす。

「A、ちょっと……こっちきぃや」


彼女は最初不思議そうに微笑を漏らしとったが、
すぐに何か察したらしく俺の方に身を寄せた。

それにつれるようにAをふわりと包み込む。
彼女の髪からはほんのりと花の香がした。
好きな匂い。

……好きな人の匂いだ。


「盧笙先生、私、楽しかったですよ」


俺の胸中でクスクスと笑うように言う。
可愛らしい。


「なら……よかった。俺も楽しかったで」

Aの髪を撫でながらそっと囁くと、
わかりやすく耳を紅くした。
ほんまに可愛いなぁ。


自然に顔が綻んで、
そろそろ帰らんと、と思い身体を離そうとした。




肩から腕ををなぞるように手を降ろしていって、
左手首を触ったときに彼女の身体がピクリと反応したのを見た。
痛そうな表情。
またはじめてみる顔やけど……


ちょっと違和感を感じ、思わず持ち上げる。


「痣……」


最悪の想像がよぎって硬直した。



──まだ信頼してくれてへんのか……?

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作者名:つづみも | 作成日時:2019年12月16日 17時

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