28episode.T ページ1
朝、廊下でばったりあった。
彼女は俺に気づかなかったふりをして去ろうとする。
そりゃそうだ。
彼女なりに気まずいんだろう。
……あの後、俺は己の行いが恐ろしく恥ずかしくなって、
Aにスマンとだけ言って去ってったんや。
逃げてしまったんや。
でも……もう逃げへんよ。
もう決めたから。
お前を幸せにするって決めたんや。
あの日簓が来てくれてへんかったら、
自分の行いに罪深さを感じて、
ほんまに退職しとったかもしれへん。
俺は女子高生にセクハラして
心的外傷を追わせてしまった
最悪な教師になっとったかもわからん。
でも、もうお前の事は傷つけない。
もう生徒先生抜きにして、
俺はお前が好きやから。
……ちゃんと、大切にしてやりたい。
知らんふりしたAにわざとらしく声をかける。
「おはよう」
振り返って一瞬驚いたみたいな顔をした。
でもすぐに笑顔に戻る。
「おはようございます」
昨日の事は忘れてしまったのではないかと思うくらい清々しい笑顔。
俺には酷く悲痛に見えた。
普通の生徒のように挨拶だけしてそくささと去ろうとする。
……すぐ抱えようとする。
昨日の事も無かったことにして、
誰にも傷を相談せずに飄々と過ごすつもりでおるんやろう。
……それは、俺が嫌や。
Aをおっかけて、
軽く肩をこちらによせた。
よろめいた彼女を別の手で支えて、
そっと耳打ちする。
「放課後、また残ってくれるか?」
横顔は笑ったままやけど、
Aからサッと血の気が引いた気がした。
……そりゃ昨日酷いことされた先生に残されるなんていい気せんよな。
怖いんやろうな。
……それでも、俺はお前を愛したい。
一縷の望みをAにかけて。
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作者名:つづみも | 作成日時:2019年12月16日 17時