応援しただけの筈だった。 ページ5
同級生/芽生え
カァンッ
音が鳴る。弓から矢を放った時に弦が鳴らす、綺麗な音だ。
2秒あるかないかくらいのタイミングで今度は、パンッと、放たれた矢が的中したことを知らせる音が鳴る。
「「よーし!!」」
高校に入り、その見た目に一瞬で私は心奪われた。
相手の名を、瀬尾梨可。
背が高く、凛とした佇まい。話してみると、これまた中身まで格好良いのだと知った。
弓道の大会、女子で予選を進んだのは彼女だけだったらしい。
彼女の後には、男子の団体戦がある。同じクラスの竹早くんと鳴宮くんも出るらしい。
弓道着姿も格好良いと見惚れながら、彼女と同じ弓道部だという白菊さん、花沢さんの隣に座り、応援する。
的中には「よし」と声を。全射的中の際には拍手を。
「梨可!お疲れ様!格好良かったよ」
「ありがとう、次も頑張るよ」
ポン、と頭をなでてくれる。惚れない人がいるのだろうか?
「……いただきました♡」
「桜木さん、相変わらずだね」
目までハートになるレベルに見惚れているところに声をかけてきたのは、弓道部の部長竹早静弥くん。
「こんにちは、竹早くん。今日もいい笑顔だね。何人落としたの?」
「えっ…えっと、なんのこと?」
梨可までではないがこの人も顔がいいのだ。
入学式の新入生代表挨拶で新入生全員が見える位置で顔をさらしたため、頭脳明晰+イケメンだと、女子たちの中で既に密かな人気がある
これで弓道をしている姿を見たらさらに何人落ちるのだろうか、なんて思考が言葉に出てしまった。
「あ、いや別に、何でもございませんわオホホホでは失礼〜」
変な事を言った気まずさからその場を去ろうとする。
そもそも私は“格好良い”に弱いのだ。こんなイケメンずっと拝んでいたら、落とされてしまう。
「あ、桜木さん!」
「え?」
何か言いたいことがあったのだろう。パシッと腕をつかまれた。
…そういや要件聞いてなかったな。
「ごめん要件聞いてなかったね、何?」
「…よかったら僕たちの試合も応援してくれないかなって。
瀬尾が『Aに応援されると調子がよくなる』って言ってたんだ」
……さらっと名前呼ばれたな…?別に良いなとか思ってないし?ちょっとキュンときたりしてないし?!
「ああうん。応援ね、わかった行くよ、喜んで、うん、じゃあ後でね」
「わかった、またあとで」
動揺が少し態度に出てしまっただろうか、なんて不安に思いながら、白菊さんたちのもとへ向かった。
68人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:眼鏡かけ機 | 作成日時:2022年9月9日 14時