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風邪ひいた。 ページ2

片想い/同中の友人


頭痛と喉の痛みで「ん……」と軽い声が出て目が覚めた。

そして、今は何時だろうと部屋の入口側へ視線をそらしてこう思った。



最悪だ。全くもって、最悪だ。

「A、起きたんだね。ゼリー食べられる?あ、おばさんは買い物に出るって言ってたよ。おばさんに薬ももらってあるから、食べられそうならゼリー食べた後これも飲んで…」


なぜ、なぜこの男がいる?なんで私の世話を焼いている…?

分からない…気がついた時には、すでにいた。


「どうしたの?何かしてほしい事でもある?」


なぜ君がここにいるのか懇切丁寧に教えてほしいな私。

というか寝顔見られたの恥ずかしいしこの格好見られるのも恥ずかしいので早く帰れ。



なんて心で悪態をつきつつ、なぜここにいるのかわからない男を睨みつける。


竹早静弥。新入生代表に選ばれる程に頭がよく、弓道の腕もいい。

私の片想い相手である。



風邪で目が潤んでいるせいか、睨みつけたはずなのに物欲しそうな目に見えたらしい。


優しい笑顔で「ん?」と先ほどのことばに対する返答を催促された。

「な…でも…さっさと帰って…」

ぼそぼそとした感じになってしまったが、咳のせいで痛む喉ではこれでもかなり頑張ったほうだった。


それでも静弥はしっかり聞き取ってくれていたらしい。

「まだ帰らないよ」

なんて、優しい声で言われてしまったら。



好きな人に風邪をうつしたくない、弱っているところも見られたくない、だから、早く帰ってほしい。



でも。

来てくれて、うれしい。


ごちゃごちゃ気持ちがこみあげてはいるものの、うまく発声できないのでは、そんな気持ちは伝えられない。


「せ、や」

「ん?……無理しなくていいよ、はいこれ」

絞りだした声に反応した静弥は、少し周りを見ると、私のスマホを取って布団に置いた。

声が出にくいならば、文面で伝えればいい、と、いう事だろう。


私にスマホを渡すと、彼も自分のスマホを取り出した。

確かに、この方が言いたいことを言えるかもしれない。



《風移ったら困るでしょ。部長なんだから。早く帰ってよ》

「帰らないよ、せめて、おばさんが帰ってくるまではここにいる。」

なんでそんなに優しく甘やかすの……。


《なんで、さっさと帰れって言ってるの》

「帰らない、Aのそばに居る。こういう時、僕が強情なの知ってるだろ?」


……静弥と目が合った。

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作者名:眼鏡かけ機 | 作成日時:2022年9月9日 14時

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