とてもじゃないけど、 (ページ6)

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ep.5 ページ6

(轟)

ボロボロの俺の前で頭を下げる、鬼邪高全日の頭である花岡楓士雄を目にして絶望的な結末が見えてしまった。

「俺は、もう必要ないってか」

バラ商の風神雷神を沈めて連合から脱退させたあと、楓士雄に報告したらこのザマだ。俺はお前のこと、もっと賢い奴だと思ってたけど…そうじゃないんだな。

「司が拉致られて、鳳仙の志田はICU。矢田もボロボロで入院してんだぞ。このままの兵力じゃ、雑魚に体力削られて終わる」

「そうだ楓士雄。俺らの方が戦力的に上でも、相手はゴキブリみてぇに溢れ出てくんだぞ。みんながみんなお前や俺らみたいに闘えるわけじゃねぇ。ジャム男とかそうだろ」

「まず司さんを助けることを最優先にしましょう！ね！楓士雄さん！」

「それとも、俺1人で十分ってか？なあ楓士雄。流石に俺らも…」

「違う。仲間のためならいくらでも頭を下げれるって事だ」

そう。こいつは、こういう人間だった。
俺には持ってない慕われる能力、慕う能力、そして

「ありがとな」

馬鹿正直で素直な奴。初めは何を考えてるんだと思った。喧嘩なんか、そんな人望必要ないんだって。でも違った。村山に言われた、"楓士雄は俺には持ってないものを持っている"という言葉。その場では煽られてるだけだと思ったけど、今なら痛いくらい意味がわかる。お前が上に立ってからというもの、どんどん俺の中で"仲間"の存在がでかくなっていった。きっと人懐っこい楓士雄の影響を受けまくってるからだろう。

「……ああ。俺たち鬼邪高の、司のためだ。あと矢田もついでに」

「矢田？…あー！！鳳仙のやっちんのこと？」

「やっちん？毎回思うが、お前のネームセンスには誰も勝てねえな」

「んな褒めんなって！…てか、なんでやっちん？ドロッキー仲良いの？」

コロコロ変わる表情はまるで犬だ。最初こそ嫌悪感を抱くものの、それが嫌いに変わることがない。人の懐に入るのがこれまでに上手い人間がいるのかと感心すらする事がある。それこそが俺には足りない、持ってないものだ。

「鳳仙の小田島と釣り仲間だって言ったろ？」

「おう」

「矢田は、魚捌くのが上手いんだよ」

「えっ！？やっちん魚捌けんの！？」

「捌ける。しかもあいつ、小田島と仲良いだろ。だから俺らが釣った魚、たまに捌いてもらってる」

「えー！！！すげえ！やっちんすげー！」

矢田が怪我すると小田島も来なくなるからな。交流が途絶えるのは困るだろ。まあ、きっちり礼はさせてもらうわ。