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「あー、ほんなら成仏が先やな」
「え？」
「こんなふわふわしたやつ、放ってどっか行けねぇわ」
「う、う、うわぁ…、は、恥ずかしいね…」
「…あんたがそんなん言ったら俺どうなるんや…！」
二人で顔を赤くして、足場の悪い崖に腰掛けている。
なに青春してんだ、この歳で。
「でも、すっごく嬉しいです！ありがとう！」
「お、おう」
無責任に言ってしまったと思いながらも、かっこつけた自分のセリフの臭さに赤面する。
ネタや演技でならいくらでも言ったことはあるが、実際心から言うとなると恥ずかしい。
巻き込まれたら面倒だなんて考えていた俺が見たら笑うだろう。
自ら首を突っ込んでいるんだからな。
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「あんさ、Aが成仏するときって、探しとる髪飾りが見つかった時？」
「そうだね」
「髪飾り、俺が見つけんかったらどうなるん？」
こんな質問をするなんて、どうやら俺は随分Aを気に入ってしまったらしい。
ミステリアスで不安定な彼女を、ひどく綺麗だと思った。
「それは…」
「そしたら成仏せえへんやんな」
「でも…、私、また何十年もここにいるの…？」
そうか。
俺は自由に色々な場所に移動出来るし、何人かの友人と会話することもゲームすることもできる。
だがAは、ここで海を眺めるか俺が来るのを待つかしかないのだ。
冷たい風が吹くこの場所で、たった一人。
未来もないまま、過去に呪縛されて。
「じゃあさ、こうしよや
俺がAの髪飾り見つけるから、だからそれまで友達でいよう。
それまでに、忘れられへん思い出つくろうぜ」
約束な。
最後にそう付け足し、A に小指を示した。
「約束…！」
冷たく小さな小指が絡まった。
こうして俺は、白く今にも消えそうな彼女と、なんとも曖昧な約束をした。
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作者名：ツナマヨ | 作成日時：2019年1月17日 23時
