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「あのーAさん？いつまでそうしてるんすかねえ」
「…知らない」
あれからずっとこの調子だ。
働けないことが相当嫌だったのだろうか。
部屋の隅で小さく膝を抱えたまま、人形のように微動だにしない。
こうやって黙っていれば美しい人なのに。
…まぁ今の顔はむくれているが。
と、頭に一つの案が。
「あ、いいこと思いついた」
「…なに」
壁際の角にいるAに近付き目の前にしゃがむと、両手で頬をつまんだ。
あまり付いていない顔の肉をそのまま横に伸ばしてみる。
「ほっひくん、なにふるの」
「俺の配達手伝ってくださいよ」
「はいはふ？」
「俺のバイクで弁当運ぶ仕事っす。まぁ給料は出ないけど後ろに乗って手伝ってください」
「やる！」
そう言ってAは勢い良く立ち上がった。
「そんじゃいきましょう、遅れます」
「はーい！」
「あ、でも。
まじで俺の目の届かないところに行かないでくださいね。気になる場所があっても一人で行かないでくださいよ。」
「意外と心配性なんだね君」
「あんたフラフラしそうなんで」
「君より長く生きてるんだぞ！見くびってもらっちゃ困るね！」
「言っても二年っすよ」
「あ、そうか」
「俺より長く生きるとこんなに早くボケるんですね」
「言っても二年だよ」
「…腹立つわぁ」
「ふふふっ」
「バイトッピくん！次の角右！」
「へーい」
久々にバイクに二人で乗った気がする。
…やっぱり距離が近くなっている。
煩悩を振り払うようにカーブを曲がり、次の目的地へ向かう。
Aを宥めるために後ろに乗せたのだが、思うより配達が楽になった。
バイクを止めて地図を広げて道を覚え、わからなくなればまたメモと道を見比べていたが、それが随分面倒だったのだ。
加えてAは、出会った時にも思ったがどうやら地理に長けているらしい。
サクサク進む仕事に、昨日よりストレスなく取り組めた。
「お疲れ様っす」
「バイトッピ君もお疲れ様」
「いやぁ案外助かりました」
「そう？よかった！」
「Aの割りにはいい仕事してました」
「びゃー悪口」
「ふっ」
「…本当に助けになったならいいな。役に立たないのは嫌なんだ」
「大丈夫すよ、助かりました」
「…明日もいく」
「はいはい、お願いします」
単純で純粋な彼女は、俺より長く生きてるなんて思えないほど穢れのない人。
…少しばかり羨ましいとも思う。
まぁ本人には死んでも言わないのだけれど。
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池田めあ(プロフ) - こういう、読みやすくて短いけれど内容の濃い小説書けるの本真天才やと思います...めっちゃ泣きました。ありがとうございました！ (2019年4月21日 15時) (
レス) id: c9f0955e0b (このIDを非表示/違反報告)
ツナマヨ(プロフ) - ちぃさん» コメントありがとうございます！ そう言っていただけると次への活力になります…！ (2019年1月17日 0時) (レス) id: 072c732a72 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ - すっごく感動しました！もう涙ボロボロです。(´；ω；`) 読んでてすごく面白かったです。これからも頑張ってください！ (2019年1月16日 1時) (レス) id: eda719901f (このIDを非表示/違反報告)
ツナマヨ(プロフ) - RiNさん» 有り難いお言葉です…！コメントありがとうございます！ (2019年1月13日 12時) (レス) id: 072c732a72 (このIDを非表示/違反報告)
ツナマヨ(プロフ) - 未知の世界さん» コメントありがとうございます！ そういっていただけると嬉しいです…！ (2019年1月13日 12時) (レス) id: 072c732a72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ツナマヨ | 作成日時：2019年1月9日 20時
