白いふわふわ、緑のぼうし〈スナフキン〉

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その時スナフキンの右手が強く引かれました。振り返ると、少女がまた控えめにスナフキンを引っ張ります。

「どうしたんだい？」
「＿＿」

　1歩、暗闇広がる壁の外へと少女が近づきました。まだ涙目のまま、焦ったようにフォルシが止めます。

「あ、こら。あまりそっちに近づくと落ちますよ」
「そうだよ。落ちたら助からないって言っただろう」

　二人に止められてもなお、少女はスナフキンの手を引き続けます。壁の上では今も強く風が吹き、3人を吹き飛ばそうとしています。この手を離したら本当にこの子は落ちていくぞ、とスナフキンは力を込めました。
　そしてふと、少女の意図に思い当たります。

「……あぁ。君が僕を連れていきたかったのは、壁の外だな。僕が国を出たいと言ったから」

　少女がぱっと笑いました。そうだそうだと言うように頷きます。けれど、スナフキンはまるで綱引きをするように、逆に少女の手を引きました。

「ありがとう。でも、君がもともと何だったのかは知らないけれど、僕らの身体では空は飛べないよ」
「＿＿」

　少女が首を横に振ります。しかし、スナフキンが「おいで」と声をかけると、渋々とスナフキンの傍まで戻ってくるのでした。

「そろそろ降りようスナフキン。その子、あんたの言うことは聞くみたいだけどさ、そのうちフラっと落っこちていきそうだし」

　フォルシの提案にスナフキンは賛同しました。フォルシと同じようにスナフキンも少女が心配でしたし、強い風に逆らって立ち続けるのも疲れていたからです。

　3人は幻想的に光る眼下の街を眺めながら、ゆっくりと壁の上を後にしました。魔法仕掛けの石扉をくぐる時、最後尾の少女はやはり名残惜しそうに立ち止まりましたが、スナフキンに手を引かれると大人しく2人に続きました。

　そうして3人は気の遠くなるような螺旋階段をうんざりしながら降り、やっと地上に辿り着いた頃にはへとへとに疲れきっていました。壁の上でも踏ん張りをきかせていた足は過度の疲れで震えています。さすがに眠れそうだとスナフキンは少しほっとしました。

「じゃあ、僕はまだ見回りがあるから。……スナフキン、やっぱり考え直してくれると嬉しいよ。無理に止めは……しないけど」

　フォルシの言葉に、スナフキンは返事をせずに微笑みました。

「それじゃあ。フォルシ」
「……またね、2人とも」

　スナフキンと少女に別れを告げると、重たそうな長銃をガシャリと揺らしてフォルシは去っていきました。

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