白いふわふわ、緑のぼうし〈スナフキン〉

草原のキャラバン ページ1

緑の帽子を目深に被ったムムリクの少年が、同じく緑の草原をゆっくりと歩いていくのが見えますか？ そう、あれはスナフキン。孤独を愛する旅人です。

　スナフキンは少し前に、冬を迎えようとしているムーミン谷に別れを告げ、南への旅を始めたのでした。岩山を抜け、枯れ草の野原を抜け、あたりにようやく緑が戻ると、風もすっかりあたたかく感じられるようになりました。

「(かれらが言っていた国も、もう少しかな)」

　スナフキンは、岩山で出会ったコウモリたちが教えてくれた国をめざしていました。なんでもそこは最近できた国で、あたりを高い壁でぐるーっと囲っているそうです。中の様子は誰も知りません。というのも、入っていったヒトは誰も出てこないからなのだとか。

　そんな噂はスナフキンの好奇心をかきたてました。そしてスナフキンは、この冬はじめて訪れる国は、そこにしようと決めたのでした。

「おや」

　もくもくと歩いていたスナフキンは、ふと足を止めました。前方にラバとヒトと幌(ほろ)馬車の行列が見えたからです。

　スナフキンの歩いている道はとても狭いというわけでは無かったのですが、前の方からやってくる行列とすれ違うのはなかなか難しそうに思えました。

　そこでスナフキンは背の高い草むらに道を逸れ、行列とすれ違うことに決めました。少し苦労してざかざかと草を踏み分けていくと、行列の先頭にいる男と目があいました。

「やあ」
「おや、これはこれは！ 心優しい旦那、ちょいと足を止めてくれやしませんかね？」
「？」

　挨拶をしたスナフキンを、先頭の男は大きな声で呼び止めました。スナフキンが立ち止まると、男は乗っていたラバから降り、後ろの行列に向けて「おおい、止まれ」とこれまた大きな声で叫ぶのでした。

「僕に何か用ですか？」

　スナフキンが不思議そうに問いかけます。

「いやはや、旦那、旅人さんとお見受けしますがね」
「えぇ」
「旅をしていると色々ご入用でしょう。なに、我々は商人でして。ええ、それも旦那のように、こうして旅をしながら商売しているわけなんです。そうして巡り会った人々、訪ねた国の人々に、おもしろおかしな買い物のひとときを楽しんでもらっているというわけですな」

　男は両手を広げ、人の良さそうにニッコリと笑います。そう、スナフキンが出会ったのは、旅する商人たちの行列＿＿行商隊(キャラバン)だったのでした。

‪𖤣𖥧𖥣｡𓂃𓂂→

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