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妹さんとわかれて、
車に乗り込んでしばらく走らせた後、

無言だった彼女の口が開いた。


青「さっきの話、一部訂正したくて...」

柳「話してくれるの?」

青「...聞かれてしまった以上は」


Aちゃんは淡々と当時を、話し始めた。


藤「俺てっきり練習中の怪我だと」

青「多分そう思われてる人が多いと思います。
ただ...」


一枚の紙を見せてもらった。

メッセージアプリのやりとりだった。記者から受け取ったものだと言う。


日大だってね

結局あの子がAに怪我させたようなもんだからね


俺は、黙って紙をまるめた。


青「目撃者なんていないんです。
誰かが来る前に私が桃を帰らせたし。

何があったか話せる人は他にいるわけないんです」


そこで妹さんの言葉を思い出す。


"否定し続ける度に、私は何度もあの日、あの場所から逃げ出す自分に戻ってしまう。

あの日のAちゃんの悲鳴を忘れられない。
ここから離れなさいって私に言うAちゃんの声がずっと蘇ってくるの"


きっと、今Aちゃんが話した以上に、生々しい光景だったんだと思う。


柳「俺達はちゃんと分かってるから」


少し間を置いてAちゃんは「ありがとうございます」と言った。


藤「妹さん、代表に選ばれてたよね?」

石「この人、妹がW杯出るなら自分は辞退するとまで言ってたんですよ。姉妹として目につかないように」

藤「は!?」


そして後部座席から藤井さんが、Aちゃんに声を掛ける。


藤「もう、辞退するとか言わないよね?」

青「...まぁ、妹はW杯のメンバーには入らなかったし」

藤「......そうじゃなくて。
次、妹さんが代表メンバーに入ったとしても、青ちゃんは居てくれるよね?
今回の事じゃなくて、この先の事」

青「...」


マサさんがAちゃんを見た。


柳「お前は、どうしたいの?」

青「どうしたいって」

柳「心の底からどうなりたいかって話」


ミラー越しに見るAちゃんの瞳が揺れていた。




石「...笑ってて欲しいよ」


気付けば口に出していた。


石「皆んな、Aちゃんの笑顔が見れると嬉しいんだよ。普段仏頂面多いからさ。

だからAちゃんが笑顔になれる選択をしてよ」




Aちゃんの手に、力が入った。




青「...次は、

私も頑張るし、桃にも頑張ってほしい」

藤「お...!」


嬉しそうに藤井さんが俺の方を見た。


柳「いいじゃん」


Aちゃんは少し困ったように笑っていた。

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Wing(プロフ) - とっても面白くて大好きな作品です!何回も読んでしまいます。 (6月24日 10時) (レス) @page25 id: 8c6a1b2baa (このIDを非表示/違反報告)
サナ(プロフ) - 一気読みしちゃいました!大っっ好きです!!!! (2022年12月8日 23時) (レス) @page25 id: 922dba79c8 (このIDを非表示/違反報告)
水無瀬 - この作品好きすぎてリピ3回してます!続きが楽しみです!お忙しいと思いますが、続き、待っています! (2022年5月22日 17時) (レス) @page25 id: 241a9407b0 (このIDを非表示/違反報告)
EY - 更新頑張ってください!まってます! (2022年2月13日 20時) (レス) @page25 id: 35d44de055 (このIDを非表示/違反報告)
mafumafu3017(プロフ) - 更新ありがとうございます!久原くんと石川くんが可愛すぎて!ほんとありがとうございます! (2022年1月3日 12時) (レス) @page21 id: 929ea4516c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:松野 | 作成日時:2020年6月5日 0時

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