女神が鉄仮面を外さない

#16 ページ31

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Side Aoyagi.


青「Scusa(すみません)！

Dov'è questo negozio(この店はどこにありますか)？」


バレー用語と最低限の会話。
イタリアへの研修が決まっての期間で、出来る限りのイタリア語を教えてもらった。

英語は通じない事もある。


ここはイタリア北東部・トレント。


『Signorina(お嬢ちゃん)！頼んだ物は買えたか？』

青『これで、いいですか？』

『上出来だ』


日本人は幼く見えやすいから「お嬢ちゃん」と呼ばれる事もある。

要するに舐められてる。

今なんて買い出しに行かされて「はじめてのおつかい」状態。


最初は下部組織の手伝いで、慣れてきたら今度はA1への参加が許された。


トレンティーノバレーは先日、世界クラブ選手権で優勝したばかりの超名門。

OHにはセルビア代表のウロシュ・コバチェヴィッチ、アメリカ代表のアーロン・ラッセルといったスターもいれば

フランス代表のリベロ・ジェニア・グレベンニコフ、セルビア代表ミドルのスレコ・リシナツの新戦力。

イタリア代表のガブリエル・ネッリやルカ・ベットーリといった大型スパイカーもいて

申し分ない攻撃力とバランス力。
こういうチーム好き、見てるだけで楽しい。


そして何より私がここに来た理由の一つは...


『テーピング、巻けない...』

青『貸して』

『ありがとう』


イタリア代表の司令塔シモーネ・ジャネッリ。

今、利き手のテーピングが上手く巻けなくて私のところに来たこの人だ。

この人のプレーを間近で観察できると聞いて、たくさん話もしたくて、イタリア語死ぬ気で頑張った。うん、こんなに勉強した事ないってくらい。

初日に、テーピングが上手くいかなくてモタモタしてるところに声を掛けたらなんか気に入られた。


シ『Aは凄いよね。
俺の好みの巻き方、初めから知ってるんだもん』

青「ごめん、途中から何言ってるか分かんない。
とりあえず、はい、Prego(どういたしまして)」

シ『ここに伸縮するやつ使った方がいいって教えてくれた後、凄く指が使い易くてさ』

青「うんうん...ん？」


『それ会話できてる？笑』


ルカが横で笑っている。


ル『皆んなでゲームしようだって。
Aも一緒に。

セッターやってたんでしょ？』

青『私は、足が...』

シ『アタックライン内しか動かないようにしよう。
ブロックも飛ばなくていいから』


聞いてない。

この中に入るの？セリエＡに？
おい石川祐希かよ。

ゲームなんて長らくやってないんですけど？


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