オカネだけの関係

「結構、楽しみだ」 ページ5

『どう？伊東さん、いい人そう？』
　
「はい。元クラスメートです。昔いじめられていた時に助けてくれた人」
　
『そう。じゃぁ契約成立でいいのね』
　
「はい。大丈夫です」
　
　
社長とのＬＩＮＥを閉じる。
　
　
進路も連絡先も知らなくて再会が絶望的だったのに、神様ありがとう。
　
運命のいたずらか、偶然か、必然か。
　
　
　
会った時返そうと思っていた一万円が入った封筒を家に忘れてしまった。
　
でも、これから三か月はいつでも渡す機会がある。気長に行こうか。
　
　
それにしても伊東くん、変わってなかったな。
　
身長が高くなってて驚いたけれど、顔も声も何も変わっていない。
　
あの頃の「王子様」は健在だった。
　
ふふ、王子様って、伊東くんにはちょっと大袈裟だったかな。
　
でもあの時の私は王子様に見えたの。
　
　
　
　
『伊東です。ＬＩＮＥ交換有難う。』
　
通知が鳴って、スマホを見ると伊東くんからだった。
　
かたっ苦しい文字面。敬語が混じった感じ、むず痒い。
　
元クラスメートといえども、ビジネスパートナーだから当然かもしれない。
　
「タメでいいんですよ？同い年ですし、一応恋人って事ですし」
　
って私も敬語で送っちゃうんだけど。
　
　
　
『俺、木曜以外の平日は大学だから会えないと思います。』
　
「私も平日は大学あります。あ、水曜日は講義ないけど」
　
ということは、会えるのは土日だけ。
　
まぁ、恋人だからといって同居しているわけではないからそんなもんか。
　
　
　
仕事だけれど、伊東くんと疑似恋愛、結構楽しみだ。

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