検索窓
今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:21,168 hit

何も知らない ページ8

校長室を出る寸前、チラリと時計を見てきた。午前6時39分。時間には未だ余裕がある。


と云うか、先刻の私、かっこよくないか?少しだけ振り返り、口元には微笑を浮かべ、『探偵です。』なんて。控え目に云ってかっこいい。



とりあえず1度、教室に戻ろう。そしてアレを靴箱に入れに行こう。

静かな校舎内に、トントントンという私が階段を登る音だけが響く。



『……私にだって、色々と思うことはあるんだよ。』



進む足を止めれば、再び静寂が訪れる。
私は何だかその静寂に飲み込まれそうな気がして、慌てて教室へと進み始める。





「あら、篠原さん。おはよう。」

『渡辺先生。おはようございます』

「随分と早いのね。」



ーー何かあったの?

と、渡辺先生はふわりと微笑んだ。




『少し、校舎の中を見て回ろうと思ったんです。みんながいると思うように回れないし、迷惑をかけてしまうと思ったので。』

「嗚呼、うちの学校、かなり広いし複雑だからね。大丈夫? 先生も一緒に回りましょうか?」

『お心遣い有難うございます。ですが大丈夫ですよ。私、記憶力は善い方なので、記憶が正しいか確かめているだけですから。』

「まぁ、それは凄いわ。流石、と云うべきかしらね。」




また渡辺先生はふわりと笑った。
この先生は何も知らないんだ。否、殆どの教師が私の正体を知らない。

私のことを知っているのは、校長は勿論のこと、学校内で上位に君臨する教師と、PTAで上位に居座りふんぞり返っている奴らのみ。

此奴等は、今回の件を公にせず無かったことにしようとしている。自分自身の為に。
だから私達のところへ依頼が来たのだ。軍警も引き受けない荒事を専門としている武装探偵社に。





『……先生、少し、善いですか?』

「なあに?」

『先生は、この学校からジサツ者が出たことをご存知ですか?』

「え、えぇ……」



何故、貴女が知っているの。とでも言いたげな顔で此方を見てくる渡辺先生。


『噂で聞いたんです。あの、詳しく教えてもらうことって出来ないんですか?』

「私達も詳しく知らないし、他言無用と云われているから……こんなことを云っても、言い訳みたいにしか聞こえないかもしれないけどね。本当に、ジサツなんてするような子じゃなかったのよ。努力家で成績も優秀。次の帝明星の候補とも云われていたの。」

『そう、ですか……。ありがとうございました。』

「いいえ、こんなことで善かったら何時でも答えるわ。また後でね。」

秘密の作戦→←探偵です。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (80 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
487人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

こおりざとう(プロフ) - れたすさん» コメントありがとうございます! ここから少しずつ、事件と篠原ちゃんの過去が明らかになっていきます。お楽しみに! (2017年4月11日 17時) (レス) id: fb35e39608 (このIDを非表示/違反報告)
れたす(プロフ) - 最後のせりふっ!続きが気になる途切れ方……更新まってます! (2017年3月26日 22時) (レス) id: c8875f112f (このIDを非表示/違反報告)
こおりざとう(プロフ) - 狂夜月さん» コメントありがとうございます! もう少し更新ペースを上げられるよう頑張りますね! (2017年2月26日 23時) (レス) id: fb35e39608 (このIDを非表示/違反報告)
狂夜月(プロフ) - 面白いです!がんばってきださい! (2017年2月24日 21時) (レス) id: 0f9e6c0dce (このIDを非表示/違反報告)
こおりざとう(プロフ) - みるふぃーゆ@怠惰Girl&Boyさん» コメントありがとうございます! 色々と想像しながら読んでみてください(笑) 更新頑張ります (2017年1月31日 19時) (レス) id: fb35e39608 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:こおりざとう | 作成日時:2017年1月20日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。