何も知らない ページ8
校長室を出る寸前、チラリと時計を見てきた。午前6時39分。時間には未だ余裕がある。
と云うか、先刻の私、かっこよくないか?少しだけ振り返り、口元には微笑を浮かべ、『探偵です。』なんて。控え目に云ってかっこいい。
とりあえず1度、教室に戻ろう。そしてアレを靴箱に入れに行こう。
静かな校舎内に、トントントンという私が階段を登る音だけが響く。
『……私にだって、色々と思うことはあるんだよ。』
進む足を止めれば、再び静寂が訪れる。
私は何だかその静寂に飲み込まれそうな気がして、慌てて教室へと進み始める。
「あら、篠原さん。おはよう。」
『渡辺先生。おはようございます』
「随分と早いのね。」
ーー何かあったの?
と、渡辺先生はふわりと微笑んだ。
『少し、校舎の中を見て回ろうと思ったんです。みんながいると思うように回れないし、迷惑をかけてしまうと思ったので。』
「嗚呼、うちの学校、かなり広いし複雑だからね。大丈夫? 先生も一緒に回りましょうか?」
『お心遣い有難うございます。ですが大丈夫ですよ。私、記憶力は善い方なので、記憶が正しいか確かめているだけですから。』
「まぁ、それは凄いわ。流石、と云うべきかしらね。」
また渡辺先生はふわりと笑った。
この先生は何も知らないんだ。否、殆どの教師が私の正体を知らない。
私のことを知っているのは、校長は勿論のこと、学校内で上位に君臨する教師と、PTAで上位に居座りふんぞり返っている奴らのみ。
此奴等は、今回の件を公にせず無かったことにしようとしている。自分自身の為に。
だから私達のところへ依頼が来たのだ。軍警も引き受けない荒事を専門としている武装探偵社に。
『……先生、少し、善いですか?』
「なあに?」
『先生は、この学校からジサツ者が出たことをご存知ですか?』
「え、えぇ……」
何故、貴女が知っているの。とでも言いたげな顔で此方を見てくる渡辺先生。
『噂で聞いたんです。あの、詳しく教えてもらうことって出来ないんですか?』
「私達も詳しく知らないし、他言無用と云われているから……こんなことを云っても、言い訳みたいにしか聞こえないかもしれないけどね。本当に、ジサツなんてするような子じゃなかったのよ。努力家で成績も優秀。次の帝明星の候補とも云われていたの。」
『そう、ですか……。ありがとうございました。』
「いいえ、こんなことで善かったら何時でも答えるわ。また後でね。」
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こおりざとう(プロフ) - れたすさん» コメントありがとうございます! ここから少しずつ、事件と篠原ちゃんの過去が明らかになっていきます。お楽しみに! (2017年4月11日 17時) (レス) id: fb35e39608 (このIDを非表示/違反報告)
れたす(プロフ) - 最後のせりふっ!続きが気になる途切れ方……更新まってます! (2017年3月26日 22時) (レス) id: c8875f112f (このIDを非表示/違反報告)
こおりざとう(プロフ) - 狂夜月さん» コメントありがとうございます! もう少し更新ペースを上げられるよう頑張りますね! (2017年2月26日 23時) (レス) id: fb35e39608 (このIDを非表示/違反報告)
狂夜月(プロフ) - 面白いです!がんばってきださい! (2017年2月24日 21時) (レス) id: 0f9e6c0dce (このIDを非表示/違反報告)
こおりざとう(プロフ) - みるふぃーゆ@怠惰Girl&Boyさん» コメントありがとうございます! 色々と想像しながら読んでみてください(笑) 更新頑張ります (2017年1月31日 19時) (レス) id: fb35e39608 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こおりざとう | 作成日時:2017年1月20日 23時