◯◯と名乗ったその男は ページ4
『……どうして』
「ん?」
『どうして、私を止めたんですか?』
私が問えば、男性は少しも考える素振りを見せずこう答えた。
「人は何時か死ぬものだ。これには抗えない。
だけど私はね。私の目の前で、自ら命を絶とうとする人は見たくないのだよ。」
『……貴方だって、心中が如何とか云ってるじゃないですか。』
顔を上げずにボソリと零した言葉に、彼は声をあげて笑った。
『何か間違ったこと云いましたか?』
「いや、何ね。真逆、君が心配してくれるなんて思っていなかったことだから。」
この人、失礼すぎる……!!
『私だって、他人の心配の1つや2つ出来ます。
……あまり興味は無いですが。』
「おや、そうかい? それじゃあ、親切なお嬢さんに1つ教えてあげよう。」
ーー私は死ねないのだよ。
死ねない?
何を云っているんだ。
自分で、人は何時か死ぬものだと云っていたではないか。
「意味が分からないといった顔だね。
なァに、特に深い意味は無いよ。言葉通りだ。私は死ねないんだ。何度ジサツを繰り返したって、一向に死ねやしない。」
『…………私と同じですね』
「おや、そうなのかい?」
『ええ。私も、あらゆるジサツを試してきました。結果は……見ての通りです。』
私が肩を竦めて笑うと、彼は目をキラキラさせながら私の手をガシッと掴んだ。
『えっ、ちょ、』
「それは本当かい!?」
『ま、まぁ』
いやー、今日はいい日だなー!!
彼はそう云いながら私の手をブンブン上下に振った。
『腕! 腕、もげますって!!』
ピピピピピ
そろそろ私の肩がヤバくなってきた時、タイミング良く彼の携帯電話が軽快な音を立てた。
ちょっとごめんねと断りを入れるなり、彼は画面を確認する。
出るのかと思うや否や、無言で携帯をポケットに仕舞った。
ーー出なくて良いんですか?
そう聞こうと思った時、男性は再び私の腕を掴んで、何処かへと歩き出す。
『えっ、ちょ、ねえ、お兄さん!!』
「太宰だよ。」
『……はっ?』
「太宰治、私の名だよ。」
太宰と名乗ったその男は、私の手を引いたままニヤリと不敵に笑った。
「良い処へ連れてってあげよう。」
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こおりざとう(プロフ) - みるくてぃーさん» 確かにそちらの方が、後味も悪くなく(?)良い気がしますね…!次からは、もう少し幸せな終わり方を目指してみます。ありがとうございました。更新頑張ります! (2016年11月2日 21時) (レス) id: fb35e39608 (このIDを非表示/違反報告)
みるくてぃー - どうせならハロウィン『…っていう夢を見たんだ。』敦「やめて」って感じの方が…!でも面白かったので良し!!更新頑張ってください! (2016年11月1日 0時) (レス) id: acf5ab12fc (このIDを非表示/違反報告)
こおりざとう(プロフ) - 物部さん» 改めまして、物部さん。コメントありがとうございます!更新頑張ります!! (2016年10月30日 8時) (レス) id: fb35e39608 (このIDを非表示/違反報告)
物部(プロフ) - ネーム変更致しました。元サクヤの物部です_(._.)_改めて更新頑張って下さい! (2016年10月30日 0時) (レス) id: fcc84377d6 (このIDを非表示/違反報告)
こおりざとう(プロフ) - 黒兎さん» フォローありがとうございます!!面白いと言われると、私のやる気が上がります(笑)文才は無いですが、無いなりに頑張っていきます。 (2016年8月19日 7時) (レス) id: 78284aef9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こおりざとう | 作成日時:2016年7月12日 22時