月華

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side_Hokuto




「…ここです」


俺はいつもの店に着き、

後ろを歩く青年へ無事道案内を終えた。


「おぉー、助かりました」


ここでさよならするのが自然だが、

俺も食料を買わなければいけないため、

狭い店内でどうしても視界に青年が入り込む。


俺は気にしないよう、嫌な顔をする店主に

「いつもの」と伝え、一週間分くらいの食料を

受け取った。


渡された野菜や肉はどれも見栄えが悪く、

所々傷んでいる。


店に出しても売れないようなものを、

俺に売りつけるのがこの村の人のやり方らしい。


売ってもらえるだけでありがたいと思えるように

なったのは、もう随分前のことだ。


俺は食料を抱え、

店から逃げるように出ようとした。


「あの！」


しかし、青年の、おそらく俺に向けて発したで

あろう声に俺は引き留められた。


恐る恐る振り向くと、

やはり青年は俺をじっと見つめていた。


「…なんでしょうか」


「名前、聞いてもいいですか？」


「…北斗、です」


「北斗…か。俺は慎太郎！

これからもよろしくお願いします」


「……よろしく…は、しないかもしれないです」


「…え？」


俺は無意識に発した嫌味とも取れる返事に

自分で驚き、

今度こそ逃げるように店を飛び出した。


あの青年…慎太郎もきっと、この村で少し過ごせば

俺の事を毛嫌いするようになるだろう。


だから、気安く「よろしく」なんて、

言わないでほしかった。




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