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「Aは?今回はどうするんですか?」

「え?なにが?」

「またついてくる気ですか」

「いつもそうしてるじゃん!私、何があってもミスラのそばにいるよ」

「はあ……変わってますね」

「それはミスラに言われたくないんですけど!」

凍てついて固くなった腕で、ミスラの頬をぽすっと叩く。

もちろんだが、ミスラは全く気にもしていなかった。
少し眉を顰めるだけ。
例えるなら、小さなコバエが辺りを忙しく飛んでいるのを煩わしく思うような表情に近い。

「死んでも知りませんよ」

「え、それはやだから守って!ね、お願い!」

「面倒なんで断ります」

「ひどっ!!非情だ!!血も涙もない!!ひとでなし!!」

「人じゃないんで」

どんなに危険に塗れた戦場だとしても、Aはミスラの肩に乗って、そばにずっと寄り添っていた。

だから、知っている。

年に一度のこの戦いで、魔法使い達がどれだけ必死になってこの世界を守ってくれているのか。
大きな力を持つ彼らでさえも命懸けとなるほどに、厄災がどれだけの強い力を持っているのか。

「今回も大丈夫だよね、ミスラ」

「そうじゃないですか」

「適当か!」

「知りませんよ、そんなの。やってみないと」

不安げなAとは違い、ミスラはいつもと変わらず淡々とした口ぶりであった。

Aはミスラとは短くない付き合いであるが、どうも掴みどころがないところは相変わらず変わらない。
長く共にいても、理解は遠く及ばない。

先の見えぬ新しい発見に喜べばいいのか、まだ彼への理解が足りていないと落ち込めばいいのか、分からない。

「行きますよ」

ミスラが空に扉を描く。そろそろ魔法舎に向かうのだろう。今年も<大いなる厄災>と戦うために。

何度も何度も彼とこの扉を潜ってきたけれど、毎年Aはバクバクと心臓が忙しなく動く。
不安が胸いっぱいに広がって、いつもよりも彼の首元にぎゅっと引っ付いてしまう。

心配だから、不安だから、毎年こうして口にしてしまうのだろう。
今回も無事に生きて帰って来れるよね、と。

何度も何度も口にして、ミスラになんでもない風に答えて欲しいのだ。胸に巣食うマイナスな感情を追い払って欲しいのだ。

「ミスラ、しなないでね」

だが、Aが出来ることなんて。ミスラの肩に引っ付いて、この戦いを見守ることくらいだ。
彼らの無事を祈ることだけ。それだけなのだ。

それが、酷くもどかしい。
なんて、ミスラが知ったら鼻で笑われるのだろう。

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あいねこ - 最高です。キャラクターとの関係性が素敵すぎます!素敵なお話をありがとうございます。更新楽しみにしております。 (2021年4月19日 2時) (レス) id: 650a36dc0f (このIDを非表示/違反報告)
藤李 - ぬいぐるみが主人公とは珍しいですね!とっても面白かったです!続き待ってます!o(*゚∀゚*)o (2020年4月14日 19時) (レス) id: b71c5bc041 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星子 | 作成日時:2020年2月29日 2時

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