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今年の＜大いなる厄災＞はいつもと違う。ミスラの肩に貼り付いていただけのAでさえも、それをひしひしと感じ取っていた。それは当人である賢者の魔法使い達であれば尚更だろう。
今年は半分ほどの魔法使いが石になった。特に南の魔法使いはその優しい性格故に、仲間の身代わりとなり、全員がその身を滅ぼしていた。Aはそれを目の当たりにして、そっと視線を逸らした。
被害は魔法使いだけでない。この世界に住まう、人間たちにも及んだ。各地から悲しみの声が聞こえる。恐怖に震えた嘆きが響いている。救えなかったモノがある。
紛れもなく、つい先程この世界は滅びかけたのだ。
｢ミスラ、帰るの？｣
｢長居する理由はありませんから｣
傷ついた世界に興味なんてないかのように、ミスラはあっさりと答える。
そんなことよりも力を使ったことにより空いた腹を満たすことを考えているのだろう。彼は何があっても、自分のペースを崩さないのだ。
｢随分と汚れていますね｣
ミスラは珍しく自ら手を伸ばしてAに触れる。一応無事なのかどうか確認しているのだろう。
それが、気まぐれなのか、情による優しさからなのかは分からない。
彼の手は無遠慮にAの頭を鷲掴み、乱暴な手つきで体に触れてくる。
｢ちょ！乱暴にしないで！｣
｢でもこうしないと見れないので｣
｢だからって片足だけつまみ上げるのはやめよう！？逆さまからみたミスラもかっこいいけどさ！！｣
｢ありがとうございます｣
｢聞き入れたのは最後の言葉だけ！？｣
Aの体は砂やホコリでごわごわとした肌触りになっており、また何処かで切れたのか足の付け根あたりから綿が溢れ出ていた。
つぶらな黒い瞳も飛び出しており、か細い糸でなんとか形を保っている状態だ。
愛らしいくまのぬいぐるみは、何とも可哀想な姿へと成り果てていた。
｢自分で縫い直さなきゃなあ｣
｢そう言いながら、この前は針を持った手まで縫い止めて半べそかいてましたよね｣
｢うっ！！｣
｢耳元で泣かれるのも鬱陶しいので、あとで俺が治します｣
｢うっ！！……わかったぁ。ありがとう、ミスラ｣
乱暴な手つきのままAはミスラの肩に戻される。硬い肩にもふっとした柔らかなほっぺたが打ち付けられる。もう少し優しくできないものだろうか。
とはいえ、優しいミスラはミスラではない気がするし、逆に怖いなと感じたので、そのままでいいかとAは無理矢理自分をそう納得させた。
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あいねこ - 最高です。キャラクターとの関係性が素敵すぎます！素敵なお話をありがとうございます。更新楽しみにしております。 (2021年4月19日 2時) (
レス) id: 650a36dc0f (このIDを非表示/違反報告)
藤李 - ぬいぐるみが主人公とは珍しいですね！とっても面白かったです！続き待ってます！o(*ﾟ∀ﾟ*)o (2020年4月14日 19時) (レス) id: b71c5bc041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星子 | 作成日時：2020年2月29日 2時
