笑うやつには。 ページ12
もう少しで伊沢家に着く。
最近あまり帰ってきてなかったなと外を眺めながら思う。
伊沢くんも同じだと思うけど。
「Aさんは最近何してんの？」
「仕事ばっか。伊沢くんは？」
「俺も仕事ばっか」
お互いそうじゃんって変な空気になる。
何とか話題を変えようと試行錯誤するも上手くいかず。
スマホを取り出して何かメッセージでもきてないか確かめていた。
「なに、男から？」
「んなわけ。伊沢くん、私の恋愛事情皆無なの知ってるでしょ。クイズ王よりモテませんから、私」
「俺はモテないよ」
「嘘は良くないよ、伊沢くん」
「俺は好きな人から好かれなきゃ意味ないって思ってるからさ」
「お、おう……」
分かりやすく動揺してしまう。
伊沢くんは真っ直ぐに運転している。
ちょっとだけ男らしく見えた。
伊沢くんって今好きな人いるのかな？
何かそういう感じに聞こえる。
それで振り向いてもらえてないのかな？
「い、伊沢くんと一緒に車に乗ってたらファンの子に笑われない？アラサーと一緒にいるって」
それなりに肌とかは気にしているけど周りから見たら私と伊沢くんは違いすぎる。
３歳差だけどこの年齢の３歳差はキツい。
「Aさんと一緒に居て笑うやつがいるなら笑わせておけばいいよ。俺は気にしない」
途中でコンビニに立ち寄ると言ってギアチェンジして駐車する。
手、男らしくなったな。
「なんかついてる？」
顔を覗き込まれる。
ドキッとしてしまった自分がいた。
２９歳にもなって、なんか言わないでね。
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作者名：*ゆ う* | 作者ホームページ：
作成日時：2021年3月7日 10時
