第49話 ページ3
日も沈み、気温も少し落ち着いてきた頃、
人も昼間の倍以上増えた混雑具合。
人々の話し声と、遠くから祭囃子の音も聞こえてくる。
浴衣を着て、りんごあめを片手に歩く人たちもちらほらと屋台の前を通って行き、
夏祭りなんだなと言うことを実感する。
「人多いですね…」
治「せやなぁ、毎年この祭りめっちゃ混んでんねん。」
「治さん、来たことあるんですか？」
治「んー、まあなぁ。何回かあんで。」
そう言った治さんは懐かしむように目を細めた。
誰と来たことあるんだろ。
今はいないって侑さん言ってたけど、
今まで彼女とかいたことあるよね。
彼女と来たこととかあるのかな？
なんて聞けるはずもなく、ただただ目の前を過ぎ行く人の流れを見つめ、
お客さんが来たら、お金をもらって商品を渡すと言うもう慣れた作業を繰り返す。
客「おにぎり宮ずっと行ってみようと思っててん、まさか祭りで食べれるなんて嬉しいわぁ。」
治「ありがとうございます。」
そんな言葉をくれるお客さんも少なくなくて、
そう言われて嬉しそうに笑う治さんを、横から見れるのはバイトの特権だなって思う。
朝からずっと、この暑い中外にいるからか、あんまり自分の頭が働いていないようで、
どことなくぼーっとしてしまい、
治「A…ゃん…」
自分を呼ぶ治さんの声に一度じゃ気付かなかった。
治「Aちゃん！」
「っ！」
治「Aちゃん、大丈夫？」
治さんは心配そうに、その大きい背を縮めて私を覗き込んだ。
「あっ、大丈夫です！気分悪いとかじゃなくて、なんか疲れちゃって…。
あ！すいません…治さんも朝からずっといますし疲れてますよね…。」
治「俺はちゃんと鍛えとるから大丈夫やねん。
それよりもAちゃん、今日ずっと働かせちゃっててごめんなぁ。」
そう言って治さんは、汗で額に張り付いた私の前髪を片手でそっと流してくれた。
治「あとちょっとで完売やねん。それまで頑張れる？？」
あとちょっとで完売…？
残りのおにぎりを見てみると、確かにあと少しだった。
そして、花火が打ち上がる時刻まであと30分。
このペースで売れたら、花火の開始時間前には売り切れてしまうんじゃないかと思った。
もしかして、治さんと花火見れるんじゃ…
そんな期待が胸の隅に湧き上がる。
「はい！頑張れます。」
あと少し、治さんのために頑張って働こう。
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ちかな(プロフ) - とても良かったです…素晴らしいお話でした！！！よろしければ番外編も見たいのでパスワード教えていただいてもいいでしょうか？あの続きを読みたいです！！ (6月6日 11時) (
レス) id: 94bbb03075 (このIDを非表示/違反報告)
ごま吉(プロフ) - 凄く面白いです！ですが68話のところ名前が(がないせいで変換されてないのが気になりました……！) (2021年11月10日 11時) (レス) @page25 id: 162c50cd7b (このIDを非表示/違反報告)
ayee(プロフ) - 番外編めちゃくちゃ見たいです！ パスワード教えてください。お願いします！ (2021年9月4日 9時) (レス) id: 3db7910b34 (このIDを非表示/違反報告)
えるる(プロフ) - 治ぅ…幸せになってよかったです！素敵でした！番外編私も見たいのでパスワード知りたいです。。ご検討お願いします (2021年8月28日 2時) (レス) id: dae120511d (このIDを非表示/違反報告)
もちーず - あの、番外編短編集のパスワードを教えて欲しいです。身勝手な願いですが、お願いします！ (2021年8月8日 20時) (レス) id: abd0311f3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たたねんこ | 作成日時：2020年5月1日 12時
