Multicolored box

あかとぴんく ページ11

チッチッチッ…


もうすぐ日付が変わって31歳の彼とはさよならして、32歳の１つ大人になった彼になる


それなのに今俺は部屋に一人きりで主役の帰宅を待っている。


遅い…遅すぎる



コンサートを見に行くと連絡が入ったのが昼頃


遅くならないから！


って言ってたくせに…今何時だと思ってんだ


まさか飲みつぶれてるとか…？


連絡するべきか…


でも盛り上がってるところだったら申し訳ないし…


はぁ…本当どうしたらいいわけ


天然無自覚の人タラシな彼だから初めましてのスタッフさんともすぐに仲良くなってしまって…気付けば好意を持たれてることなんかもしょっちゅうなわけで…


俺の心配は尽きない


たいまだ飲んでるの?遅くなるなら迎えに行くから連絡して


電話は申し訳なくて…メッセージなら都合のいい時に見るだろって送ってからもう1時間


このままだと本当に日付変わっちゃうよ


32歳になった君の1番最初の笑顔を見るのは俺だって勝手に決めた


だからこそ帰ってきてもらわなきゃ困るわけで


『 早く帰ってこいよ…待ちくたびれたぞ… 』


ソファでぼーっと情報番組を見ながらうとうと…


日付が変わるまであと5分という所で玄関に鍵が差し込まれる音がした


「 たいー！ただいまー！！…あれ？たいー？寝てんのー？ 」


ドタバタと廊下を走る音が聞こえるけど何だか眠いスイッチが入ってしまった俺はいつものように玄関までお迎えに行くことが出来なかった


勢い良くリビング扉を開けた主役はお酒のせいかいつもより上機嫌でパタパタとスリッパを軽快に鳴らしながらソファへ近づいてきて


「 たーい♪ただいま♡ 」


隣にドカッと座ると顔中にキスを落として来る


だけど眠い俺は返事が出来ずにされるがまま


「 あれー？たい？寝てんのー？ 」


ユサユサと肩を揺らされ少しずつ覚醒して来る


『 ……ひろ…おかえり、 』

「 ん！ただいま！ 」

『 …おそい……ねむい… 』

「 眠そうなたい可愛い♡襲っちゃおう♡ 」

『 …ん……や、だ… 』


ギュッと抱きしめられて唇を重ねられればお酒の香りが鼻腔をくすぐる


それが何だか無性に嫌で顔を背けてしまった


それが気に入らなかったのか…


先程までのご機嫌な表情は消え無言のまま抱き抱えられて寝室に運ばれる


それでも大切にされてるのは良くわかる


だってベッドに下ろす腕がいつもと同じで優しいから

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