返事 ページ5
つばさは司咲の髪に触れた。つばさの指を司咲の髪が滑り落ちていく。
「突き止められたら、司咲が何されるか分からない。何もされないかもしれないけど、害されるかもしれない。俺はさ、司咲が傷つくのは耐えられない。だから、連絡を絶ったの。俺と司咲が騒がれるわけにはいかないから。念には念を、ね」
「……ありがとう。守ってくれてありがとう」
そう言って微笑む司咲をつばさは抱きしめたくて仕方がなかった。
「でも、寂しかった。俺はもう司咲がいないとダメだから。もう、離れたくない。司咲のことが大好きだよ」
司咲へと向けられる、甘い視線に耐えられなくて俯いた。
「ねぇ、つばさくん」
「ん?」
チョコレートよりも甘い声に司咲は微笑んだ。
「私と付き合って」
「えっ」
「そうだ。今からデートしよう。私、つばさくんとデートしたい」
言葉を失うつばさに司咲は唇を尖らせた。
「何よ。嫌ならいいわよ」
プイッと顔を背ける司咲につばさは髪に飾られたバレッタに触れながら小さくため息をついた。
「嫌じゃないよ。嫌なわけないでしょ。すごく嬉しい。…でも」
「何よ」
司咲の頬が赤く染まっていて、それが嬉しかった。
「俺が言いたかった…」
「今更カッコつけなくてもいいじゃない」
背けた顔をつばさに向けて、司咲は微笑んだ。
「……もう。大好き」
「私も好き」
見つめあって、司咲とつばさは微笑んだ。幸せだった。解決しなければならないことはあるけど、それでもつばさと一緒にいられて幸せだった。
「お茶屋さん行こう!つばさくんとお茶が飲みたい」
立ち上がった司咲はつばさの手を引いた。
「早く。時間がなくなるわ」
「そうだね」
つばさは立ち上がると、手を引かれるまま足を動かした。
京都の霊や妖怪なんて気にならなくて、司咲はつばさだけを見ていた。
昨日も訪れたお茶屋さんに入った。店内の奥、角の席に案内されて司咲はつばさの正面に座った。
「あ、そういえば」
「ん?」
メニュー表を開こうとして、閉じた。つばさの瞳をじぃっと見つめた。
「私、まだ返事聞かせてもらってないんだけど」
テーブルに手をついて、身を乗り出した。首を傾げるつばさの右手を両手で握った。
「私と付き合ってっていう言葉に明確な答え、返してもらってない」
「…そうだっけ?」
「そうよ」
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年3月16日 12時