家族のこと ページ21
戻ってきたりなは可愛らしい、ダークブルーのリボンが印象的なワンピースを着ていた。ショートの髪にはカチューシャがつけられていた。対する司咲は仕事終わりのTシャツとズボンだった。女子力の差を感じる。
「お待たせ」
「りな、もしかしてデートだった?」
「え、なんで?」
「だって、すごくかわいい格好してるから」
「デートじゃないよ。だって私、彼氏も好きな人もいないよ」
カラカラと笑うりなを司咲は紅茶を飲みながら見つめた。自分の笑顔をまじまじと見つめたことはないが、笑った顔がとてもそっくりだと思った。
「お姉ちゃんは?」
問われて、首を傾げるとりなは満面の笑みを浮かべた。
「彼氏いるの?」
「……えっ。………まぁ…。それなりに?」
何故か気恥ずかしくて、目を逸らした。何がそれなり、なのかもよく分からないまま、俯いた。
「どんな人⁉︎写真とかないの?」
「……えっと。優しい人よ。…たまにうざいけど。写真はないわ」
検索すればすぐに出てくるだろうけれど、恥ずかしくて言えなかった。
「お姉ちゃん、かわいい!」
「…も、もう!こんな話どうでもいいでしょ!」
赤い頬をクッキーを食べて誤魔化した。
「あ、この前来てた人?」
「違う。あの人はただの友だち」
司咲は無意識に髪を触っていた。出会ったばかりの妹とこんな話をするとは思わなかったのだ。気恥ずかしくて、消えてしまいそうだった。
「……聞かせて。りなが知っている私の家族のこと」
本題を切り出すことで話を逸らした司咲はりなをまっすぐ見つめた。それでも、少しだけ震える手を膝の上に置いてりなの視界から隠した。
「私、ずっと兄と2人兄妹だと思っていたの。だって、お母さんはお姉ちゃんのこと一回も口にしなかった」
「……りなには、お兄さんがいるの?…それって…」
「うん。お姉ちゃんの弟だよ。私たち3人は同じ親から生まれてきた兄弟なの」
司咲には2人の弟妹がいる。はじめて聞く内容だった。前に祖母の家に行った時も、聞かされなかった。母のことで混乱していた司咲をこれ以上混乱させたくないと思ってのことだろう。
「5年前、お父さんが事故で亡くなって。オカルトが苦手で怖がりだけどすごく優しい、大好きなお父さんだったの。私もお兄ちゃんもすごく泣いて。……でも、お母さんは泣いてたけど…。なんか変だった」
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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2022年3月16日 12時