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下心 ページ8

「着替えろって言ったの司咲ちゃんだよ」

「そうだけど、私がいるところで着替えないでよ、バカ‼︎」

両手で顔を覆って背を向ける司咲に小さく笑った。博喜の話題ばかりで少しだけ嫉妬していたのだ。

「司咲ちゃんなら気にしないけど」

「私が気にするの!」

「ダメ?」

「もう少し恥じらいというものを…」

ぐいっと手を引かれて、司咲はまたつばさと向き合う形になる。

「早く服着なさいよ、バカ‼︎」

司咲はバシッとつばさの胸を叩いた。

「痛っ」

「信じられない!」

つばさは片手で目元を覆って騒ぐ司咲のその赤い頬に口付けた。

「ごめんね」

立ち上がると、つばさは鞄から青いTシャツを取り出して着た。

「ていうか、なんでいちいちキスするのよ!」

「かわいいからかな」

両手で司咲の頬を包んで上を向かせた。潤んだ瞳はもう悲しみに心を動かされていなかった。

「少しは元気になった?」

「……え?」

つばさを見返す司咲の瞳が揺れた。

「博喜の話題ばかりで少しだけ嫉妬したってのもあるけど、少しは気が紛れるようにって思って」

つばさは司咲に優しく笑いかけた。

「ま、下心しかないけどね。これで君が俺に惚れてくれればいいなって」

「うっわ、最悪。感動しかけた私がバカだわ」

「…感動してくれたの?」

「…少しだけよ」

ふん、とそっぽを向く司咲をつばさは優しく抱き寄せた。つばさは腕の中に収まった司咲の髪を愛おしそうに撫でて微笑んだ。

「でも、まだまだライバルは多そうだな。司咲ちゃんかわいいから」

「意味分かんないこと言ってないで、離してよ」

「嫌だよ。なんで離さないといけないの。せっかく2人きりなのに」

「それが嫌なんだけど。何されるか分からないから離してほしいのよ」

「何もしないよ。………多分」

自信なさげにそう付け足したつばさの胸を押す司咲を更に強く抱きしめて、頑として離そうとしなかった。

「…好きだよ。俺と付き合ってよ」

「……私、失恋したばかりなんだけど」

「知ってるよ」

「絶対嫌よ。あなたとは付き合いたくない」

「……どうして?」

一瞬だけ震えたつばさの腕に強く抱きしめられて、司咲は両手を彼の胸に置いた。突っぱねようと腕を伸ばそうとするが、つばさの力には敵わない。抱きしめられる力の方が強く、腕を伸ばすことができなかった。

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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2021年10月25日 23時

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