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神社 ページ10

《もう良い。普通にせい》

「はい。感謝致します」

そう言って司咲は礼を解いて立ち上がると、玉依姫命(たまよりひめのみこと)を見上げた。

《本当に見えるのだな》

「残念ながら」

《あれは弱い霊だ。そのうち閻魔の部下の鬼が回収しに来るだろう。それまではここにいると良い》

「ありがとうございます」

《どうやら司咲の知り合いが来たみたいだ》

「え…。名前」

大國魂大神(おおくにたまのおおかみ)は我が眷属ぞ?》

「そうでした。申し訳ありません」

《良い良い。ではな。ついでに滝でも見て行くと良い》

「はい。そうさせていただきます」

その言葉を聞いて、神様は姿を消した。おそらく社に帰ったのだろう。

「本当に見えてるんだ」

隣から聞こえた声に司咲は驚いて数歩距離を取った。その声色は疑っていたわけではなく、改めて理解するときに発する音だった。

「久しぶり、司咲ちゃん」

太陽のような笑顔。だけどそれが司咲には眩しかった。

「…何か御用ですか?」

「つれないなぁ。見かけたから声をかけただけなんだけど」

「そうですか。では」

踵を返そうとする司咲につばさは慌てて声をかけた。

「司咲ちゃん、ちょっと待って!」

パシ、と手首を掴まれて司咲は反射的に振り払ってしまった。

「……あ」

「ごめん!」

「……いえ」

ふいと顔を背ける。その顔がつばさには酷く悲しそうに映った。その心が助けを求めているような気がした。

「…なんですか?」

問いかければ、つばさはスマホを出した。

「連絡先交換しない?」

「しませんし、今スマホ持ってないので」

だんだんと結界を叩きながら喚いている霊の声が耳障りで仕方がない。

「えっ?大変!大丈夫?」

「こんなの平気ですから、もう私のことなんて放っておいてください」

もう疲れてしまった。誰かを信じることに。この人ならきっと特異な目も受け入れてくれると、信じて裏切られてきた。

基裕みたいな人が稀で、普通は司咲とは距離を置きたがるのに。何故つばさは近寄ってくるのか、それが理解できない。どうせみんな司咲のことを気持ち悪いと思うに違いはないのだから。ずっとそうやって生きてきた。信頼できるのは基裕ただ1人。

踵を返した彼女の隣をつばさは当然とでもいうように歩く。

「神社好きなの?」

夕焼け→←玉依姫命



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作者名:星ノ宮昴 | 作成日時:2021年6月29日 15時

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