目の色 ページ47
「……不謹慎かもだけど基くんとか、あの人じゃなくて良かったって心底思ってる」
『あの人って…つばさ？』
「うん。基くんにもあの人にも絶対キスしたくなかったから。は…はじめて、だったし」
「えっ⁉それは逆に申し訳ない！」
慌てだす博喜に司咲は右手を口元に持っていってクスリと笑った。
『なんか、司咲がさっき怒った理由が分かった』
「うわっ。そこ掘り返すとか悪趣味」
『大方、つばさにキスでもされたんでしょ。で、ぶん殴った？』
『えっ。つばささんって司咲ちゃんのこと…？』
ずっと黙っていた升吾の声が聞こえて、司咲は頭を抱えた。
「告白、みたいなのはされたけど…」
『で、つばさの前で博喜にキスしてわかりやすく嫉妬された、と…』
『うわ、つばささんかわいそう…』
涼星の本気で同情したような言葉に司咲は頬を膨らませた。
「何、私が悪いって言いたいの？」
『そうじゃないけど。つばさの行動理由が俺には分かるよ。意外と分かりやすい男だから、つばさは』
「……忘れようとしてたのに、最悪。気持ち悪い…っ」
まだ感触が残っている気がして、指で唇を拭いた。
「すごい拒否反応…。ごめんね。俺だって司咲ちゃんの好きなヤツじゃないのに」
「いや！あれは、私の意志だったから…。謝るのは私の方だし…」
俯きかけて、司咲は博喜の頬を両手で包むと、その瞳を覗き込んだ。
「……えっと？」
「博喜さんって目の色、黒だよね？」
「え？うん。そうだけど」
「赤茶色になってる…。多分、私の霊力流しすぎた」
司咲の顔色が白を通り越して青くなっている。顔面蒼白、とはこのことを言うのだろうと博喜は場違いなことを考えた。
『博喜は大丈夫なの？』
「今ここで流しすぎた分の霊力を回収すれば問題ないけど……」
『けど？』
「…その、方法が口移ししかなくて…」
『つまり、またキスをしないといけないってことか』
「えっ！それこそ俺、つばさに恨まれない？」
『多分、司咲が博喜にキスした時点でつばさの中ではライバルになってるから大丈夫！』
「全然大丈夫じゃない…」
『男には、覚悟を決めなきゃいけない時がある…』
「涼星…いや、みんな面白がってるだろ」
『気のせいだよ』
そう言う基裕の声が笑いを堪えているような気がして、博喜は恨めしげな声を出した。
「明日覚えとけよ…」
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年6月29日 15時
