晴明神社 ページ34
司咲は目を大きく見開いてから、つばさを凝視した。嫌いだけど、顔は整っているとは思っていた。だけど彼が俳優だったなんて知らない。
「……なんで俳優やってるあなたが私に関わろうとしてくるの」
「司咲ちゃんのことが知りたいからだよ」
「…バカじゃないの」
司咲は腕を組んでつばさから目を逸らしてため息をついた。嫌いだから、この人には頼りたくないと思ってしまう。
「やっぱり嫌い？」
「大っ嫌い」
「そっか」
司咲の答えにつばさは悲しそうに笑った。
帰宅すると、メッセージアプリを開く。基裕以外に新たに登録されたのは俳優の名前。岡宮来夢、田中涼星、田村升吾、仲田博基、spiの5人。そこにつばさの名前はなかった。やはりいつものようにつっぱねてしまった。彼のことを知ろうと思ったばかりなのに。
嫌いと言えば彼は悲しそうな顔をする。司咲が傷つけてしまっている。分かるのに、どうしても受け入れられない。彼のことをおそらく心が拒否しているのだ。
だけど、今日はなんだか疲れてしまった。はじめて霊相手に陰陽術を使ってしまったからだろうか。
昔、学校の修学旅行で晴明神社へ行った。班ごとの自由行動だったけれど、そのルートに晴明神社は入っていなかった。
東京よりも魑魅魍魎が跋扈する京都は司咲にとってあまり居心地のいい場所ではなかった。クラスで浮いていた司咲は誰にも見向きもされず省かれ、置いていかれた。だが、それが正解だったのかもしれない。
当時は目を合わせてはいけない、なんて知らなかったし、追いかけられる理由も知らなかった。追いかけてくる妖怪から逃げながら、司咲は慣れない土地で神社を探した。そして、たまたま逃げ込んだのが晴明神社だったのだ。
どこの御祭神よりもずっと良心的でとても優しかった。
『お主、見えておるな？』
「えっ」
まだ中学生の司咲のところへ寄ってきて、そう言ったのは安倍晴明本人だった。神様に祀り上げられても、その本質は変わらないようで、穏やかに笑っていた。
『見る限り、相当見えておるな』
司咲の顔をじっと覗き込んで、晴明は顎に手をやった。
『見えすぎるのは良くないが、今の私にはどうすることもできない』
「見えすぎている、のですか…？」
頷いた晴明は、司咲の頬に触れた。
『力の封印は出来なさそうだ』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年6月29日 15時
